効率と非効率
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
そんなアレスはクラナフ司令官に呼ばれて、司令官室に向かう。
司令官室は、着任当初と何も変わっていない。
前回はいたメルトラン中佐がおらず、室内にはクラナフ大佐の姿しかなく、より寂しさを浮き立たせていた。
入室前に身体についた雪を払えば、そのままでとの声がかかった。
室内に入れば、暖気が身体を包み込む。
考えていたよりも身体は冷え切っていたようだ。
寒さを思い出して震えだす身体を押さえながら、アレスは司令官の机の前に立った。
「特務小隊。任務を終了し、ただいま帰還いたしました」
「御苦労。すぐにでも休んでもらいたいところだが、そうもいかなくなった。君が、危惧していたことが現実になった」
苦々しげに、クラナフが手元に紙を落とす。
配属されてすぐに上に提出した手動への切り替え――そのマニュアルと伝達の必要性だ。
それは必要性がないと目の前のクラナフに却下されたが。
「基地内の装甲車を手動に切り替えられるか?」
「既にルードに、他の整備兵に手順を教えるようにしました。ただ慣れたルードでも一台四時間近くの時間がかかります。とても一日で全てをとはいかないでしょう」
「構わない。出来るだけ急いでくれ」
「そのように伝えます。それで、敵基地への攻撃部隊はどうなったのでしょうか」
問われて、クラナフは眉をひそめた。
表情に迷いが浮かび、だが、真剣なアレスの視線に口が開かない。
やがて、諦めたようにため息を吐いて、首を振った。
「攻撃中に、この基地と同様に装甲車が動かなくなった。メルトラン中佐は死亡し――一部を除いて、徒歩でこの基地に撤退しているそうだ」
「装甲車が動く時点で、撤退をと伝えたはずですが。間に合わなかったのですか?」
「あの時に撤退の命令が出せるわけがないだろう。こんな事が起こるなど、誰にも……」
力強く机を叩こうとした拳は、前に立つアレスの視線によって力を失った。
続く言葉は、アレスには届かない。
ただ一人、目の前にいる人間がそれに気づいていたことは手元の資料から明白だった。
「可能性があると申し上げたはずですが」
「そう、可能性だ。だが、可能性で全ての装甲車を変更する権限など私にはない。ことはこの基地だけではなく、同盟軍全体に及ぶのだからな」
「ええ、知っています」
呟いたアレスの言葉には、批判的な感情は一切なかった。
ただ見つめる視線に、クラナフは視線とともに話題をそらした。
「おそらく敵はこの基地を攻めてくるだろう」
「装甲車が動かなくなったと敵は思っているでしょうね」
「それは防がなければならない」
言葉に、アレスが片眉をあげた。
「ここは一時的に撤退するべきかと思いますが」
「なぜだ」
「装甲車が動いたとし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ