仲間の為に、他人の為に。
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はいえ、凄まじい威力の蹴りに、ティアは地面に転がった。
(動きが速い!こんなに図体デカいのに・・・嘘でしょ・・・!?)
驚愕に目を見開きながら、ティアは立ち上がろうと脚を動かす。
そして、気づいた。
「!」
右脚が、近くの木の根っこに引っかかっている。
「ぶっ潰してやるーーーー!」
目の前には血走った目を向け、両手をハンマーのようにして振り下ろそうとする森バルカン。
避けようにも、足はなかなか根っこから離れない。
「っ・・・!」
ティアは覚悟を決め、目を閉じる。
(拳が振り下ろされたと同時に体を水に変えて、隙を見て距離をとる・・・大丈夫。冷静になれば不可能じゃないわ)
ティアがその事を確認した、瞬間。
「ティアーーーー!」
リサーナの叫びをかき消すかのように、激しい轟音が響いた。
目を閉じていたティアは、すぐさま違和感を感じる。
(・・・拳が、来ない?)
衝撃が来ないのは想像していた。
体を水へと変えてしまえば、小細工なしの物理攻撃など効かない。
が、押し潰されるような感じは全くなく、そもそも拳がティアに届いていない。
(どういう事?)
不思議に思いながらもゆっくりと目を開ける。
そして、驚愕した。
「ぐっ・・・コイツは・・・やらせねぇ・・・!」
ナツが、森バルカンの拳を必死に両手で受け止めていたのだ。
「アンタ・・・何で・・・?私は体を水に変えられるし、別にこの程度の攻撃はどうって事・・・」
「だったら傷ついていいのかよ!」
ティアの言葉を遮り、ナツが叫んだ。
「体を水に変えられるから何だ?それを知ってるから助けるなってか?ふざけんじゃねぇ!」
怒りを含んだナツの声に、ティアはただ沈黙する。
わざと沈黙している訳じゃない。
(・・・どうして?)
目の前にいるのは、自分より実績も経験も魔力の量も、全てとは言わないが劣っている、ギルドに加入してまだ1年ほどの少年。
明らかにティアの方が強く、魔法でも頭脳でも素手の戦いでも、素手の戦いを除けば基本ティアが勝つだろう。素手での勝負はあまりしない為、結果は解らないが。
(どうして・・・)
そのハズなのに。
目の前で拳を受け止めているナツは、明らかに自分より弱いハズなのに。
「仲間がやられそうなトコ見て・・・黙ってられる訳ねぇだろうがあああああああっ!」
叫んでいる言葉でさえ、何の根拠もないものなのに。
(どうして・・・コイツが、強く見えるの?)
ティアの青い目に映るのは・・・いつもと変わらないナツ。
なのに、その姿は、いつもよりも強く見えた。
(コイツは―――――――)
そして、唐突に理解する。
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