暁 〜小説投稿サイト〜
我が剣は愛する者の為に
熊と勝負
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の熊が倒れているのを見て、泣き声をあげる。

「・・・・・・」

何故、あの熊があんなに怒っているのかが分かった。
子供がいたからだ。
そんな事を知らずに孫策はあの熊の縄張りに入ってしまい、熊は子供を守る為にアレだけ興奮したのだろう。
三匹の小熊は依然と泣き声をあげて、熊に呼びかける。
何だか、罪悪感が俺を襲う。

(くっそ〜〜〜。
 南無三!!)

俺は痺れる両手を使って立ち上がり、倒れている熊に近づく。
小熊は近づく俺に警戒して、威嚇の声をあげる。
無視して熊の身体に近づき触る。
呼吸をしているような感じで身体が上下に動いていたので、何とか生きているだろう。
俺と周瑜が釣った魚の所まで走って、まだ焼いていない魚を全部抱えて、熊の所に向かう。
ついでに川で目を洗い、砂を取り除く。
俺が戻ってくる頃には親の熊は目が覚めて、起き上がっていた。
熊は俺の姿を見ると、小熊とは比べ物にならない威嚇の声をあげる。
不用意に近づかずに釣った魚を地面に置く。

「すまなかった。
 お前達の縄張りを荒らして。」

傍から見れば自殺行為に見えただろう。
何せ、3メートルくらいの熊を目の前に逃げるどころか、頭を下げているのだ。
しかし、熊が目を覚ました時点で俺は逃げる事も立ち向かう事もできない。
よく考えるとこっちが縄張りに入った事が原因で、熊を刺激しなければこんな事にはならなかったはずだ。
でも、俺のやっている事は馬鹿のすること、いや馬鹿でもこんな事はしない。

(死んだな、俺。)

頭を下げつつ、俺はそう思った。
熊がこちらに近づいてくる足音が聞こえる。
だが、熊は俺を襲う事なく横を通り過ぎていく。
ゆっくりと、顔をあげると置いていた魚は無くなっており、後ろを見ると自分の森に帰ろうとしている熊が見えた。

「助かった・・・・のか?」

信じられない光景を前に俺は生きている実感がしなかった。

「縁!!
 大丈夫か!?」

後ろから師匠の声が聞こえ、俺は振り向く。
そこには戟を持った師匠と剣を抜いている孫堅。
そして、弓を構えた女性がこっちに走ってきている。
その後ろには孫策と周瑜がいる。
師匠達を見て、ようやく危機が去ったと認識して、本当の意味で腰が抜けた。

「怪我は!?」

「はは・・・奇跡的になしです。」

「お前、まさか一人で熊を撃退したのか?」

「ええ、まぁ。
 でも、最後は熊に謝ってそのまま森に帰りましたけど。」

俺の言葉が信じられないのか、その場にいる全員が大きく目を見開いている。
まぁ、俺もそんな言葉を聞いたら驚く。
だが、折れている木刀、その後ろでは魚を銜えた小熊と親の熊が見える。
それらが俺の発言を本当なのだと証明している。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ