熊と勝負
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の熊が倒れているのを見て、泣き声をあげる。
「・・・・・・」
何故、あの熊があんなに怒っているのかが分かった。
子供がいたからだ。
そんな事を知らずに孫策はあの熊の縄張りに入ってしまい、熊は子供を守る為にアレだけ興奮したのだろう。
三匹の小熊は依然と泣き声をあげて、熊に呼びかける。
何だか、罪悪感が俺を襲う。
(くっそ〜〜〜。
南無三!!)
俺は痺れる両手を使って立ち上がり、倒れている熊に近づく。
小熊は近づく俺に警戒して、威嚇の声をあげる。
無視して熊の身体に近づき触る。
呼吸をしているような感じで身体が上下に動いていたので、何とか生きているだろう。
俺と周瑜が釣った魚の所まで走って、まだ焼いていない魚を全部抱えて、熊の所に向かう。
ついでに川で目を洗い、砂を取り除く。
俺が戻ってくる頃には親の熊は目が覚めて、起き上がっていた。
熊は俺の姿を見ると、小熊とは比べ物にならない威嚇の声をあげる。
不用意に近づかずに釣った魚を地面に置く。
「すまなかった。
お前達の縄張りを荒らして。」
傍から見れば自殺行為に見えただろう。
何せ、3メートルくらいの熊を目の前に逃げるどころか、頭を下げているのだ。
しかし、熊が目を覚ました時点で俺は逃げる事も立ち向かう事もできない。
よく考えるとこっちが縄張りに入った事が原因で、熊を刺激しなければこんな事にはならなかったはずだ。
でも、俺のやっている事は馬鹿のすること、いや馬鹿でもこんな事はしない。
(死んだな、俺。)
頭を下げつつ、俺はそう思った。
熊がこちらに近づいてくる足音が聞こえる。
だが、熊は俺を襲う事なく横を通り過ぎていく。
ゆっくりと、顔をあげると置いていた魚は無くなっており、後ろを見ると自分の森に帰ろうとしている熊が見えた。
「助かった・・・・のか?」
信じられない光景を前に俺は生きている実感がしなかった。
「縁!!
大丈夫か!?」
後ろから師匠の声が聞こえ、俺は振り向く。
そこには戟を持った師匠と剣を抜いている孫堅。
そして、弓を構えた女性がこっちに走ってきている。
その後ろには孫策と周瑜がいる。
師匠達を見て、ようやく危機が去ったと認識して、本当の意味で腰が抜けた。
「怪我は!?」
「はは・・・奇跡的になしです。」
「お前、まさか一人で熊を撃退したのか?」
「ええ、まぁ。
でも、最後は熊に謝ってそのまま森に帰りましたけど。」
俺の言葉が信じられないのか、その場にいる全員が大きく目を見開いている。
まぁ、俺もそんな言葉を聞いたら驚く。
だが、折れている木刀、その後ろでは魚を銜えた小熊と親の熊が見える。
それらが俺の発言を本当なのだと証明している。
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