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我が剣は愛する者の為に
熊と勝負
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引っ掛かり、そのまま砂を巻き上げた。
おそらく熊は意図的に狙った訳ではないだろう。
その砂は俺の顔面に当たり、眼をやられてしまう。

(しまった!?)

後ろに下がって眼の調子を確かめる。
左目は大丈夫だったが、右目に砂が入り開けられない。
何とか眼の砂を取り除こうとしたが、獲物が弱っているのを感じ取ったのか、熊は一気に接近してくる。
そして、左手を横一線に振り払う。
左目だけだと、距離感がうまく掴めず、何より狭くなった視界では回避が困難だった。
しかも狙ったかのように、右目の死角を突いてくる。
俺は受け身など考えず、後ろに跳ぶ。
地面に仰向けに倒れると、熊は俺に覆い被さろうとする。
横に転がる事で間一髪、避ける事ができた。
もし、マウントされれば俺の命はなかっただろう。

(やるしかない。
 このままだといずれ捕まってしまう。
 なら、殺られる前に殺れ!)

熊は雄叫びをあげながら、こっちに走ってくる。
対する俺も熊に向かって走り出す。

「おおおおおおおおお!!!!!!」

狙う箇所は一つしかない。
あれほどの筋肉で覆われた身体だ。
俺の筋力と木刀では致命的な一撃を与える事はできない。
だが、頭ならどうだろうか?
渾身の一撃で倒せる可能性が一番高いのは、おそらく頭だろう。
俺は出来る限り振り被り、さらに熊が突進してくる勢いも利用する。
飛び込み面の要領で、面を熊の頭部に向かって打つ。
こちらも出来る限り突進したが、やはり熊の方が強い。
バキン!、という音と持っている木刀が一気に軽くなった事でバランスが崩れ、俺は熊の脇を抜けるように倒れる。
結果、熊とぶつかるなくすれ違う。

「いっつぅ〜〜〜〜!!!」

熊と真正面から打ち合ったせいなのか、両手は痺れ、木刀は刀身の部分が折れていた。
震える両手を気にしつつ、後ろから鈍い音が聞こえた。
確認すると、熊が倒れていた。
それを確認すると、俺は一気に安堵の息を吐いて、地面に座り込んだ。

「し、死ぬかと思った。」

俺は安心して、この場から離れようとした時だった。
ガサリ、と近くの茂みからそんな音が聞こえた。
俺はその音のする方にゆっくりと視線を向ける。

(もしかして別の熊か!?
 木刀もないし、やべぇぞ!!)

内心かなりビビりながら、茂みの方に視線を注ぐ。
そこから出てきたのは三匹の小熊だった。

「へ?」

思わず声を出してしまった。
小熊だと確認すると、腰が抜けたように俺は地面に倒れ込んだ。

(寿命が縮むから止めてくれ。)

大きなため息を吐いて、俺はそう思った。
俺は後ろに倒れている熊を見ると、そこには先程出てきた小熊が近づいていた。
どうやら、あの熊の子供らしい。

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