2『錬金術』
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学んだ剣術を生かすことができるかもしれない。
初期装備として《スモールソード》というアイテムがアイテムストレージに入っているのだが、耐久知的にも心もとないこの剣だけではいささかの不安が残る。それに自分で《刀剣錬成》を試してみたかった。
プレイヤー達があまり多くない、《はじまりの町》の裏通り、そこに、一軒の武器屋がある。βテスターからは「値段の割に品揃え・品質がいい」ということで、初期のアイテム購入にお勧めのポイントなのだが、そんなことをヘルメスが知るはずもない。ただ、意外と安いんだな、と思ったくらいである。
この世界の通貨は《コル》といい、1コル大体1円ほどの価値があるようだ。初期値は1000コル。そのほぼすべてを使い切って、ヘルメスはありったけの投擲用ピックを買い込んでいた。理由は主に二つ。一つ目の理由は錬金術的な理由。《等価交換》の発動に必須の条件は、《同質のものをそろえる》ことである。投擲用ピックなら、スモールソードと同レベルの、もしかしたらそれよりも性能のいい剣が一本か二本作れるはずである。それをさらに錬成していけば、上等の剣をつくり出すことも可能。
もう一つは、システム的な理由だ。ヘルメスは《武器スキル》が一切使えないので、ソードスキルが使用できない。しかし、ソードスキルの中には、どの武器スキルにも由来しない、《共通ソードスキル》という物がある。よっぽどのバグか何かが存在しなければ、それは誰にでも使用できるし、実際メニューウィンドウの「使用可能ソードスキル一覧」には、それら共通ソードスキルがいくつか記されていた。そして、それらの多くは投擲系のスキルである。基本はその辺に落ちている小石オブジェクトを投げるのだが、別に投げるものが投擲用ピックでも何の問題もない。
以上の理由から、ヘルメスは買えるだけのありったけの投擲用ピックを買い込んでいた。最劣化の投擲用ピックの数本ほどなら、戦闘中にフィールドで《刀剣錬成》を行っても邪魔にはならない。
「たしか、ノンアクティブモンスターがこの辺にいたよな」
ヘルメスは茅場がゲーム開始前に説明したいくつかの情報を整理し始めた。そして同時に、《はじまりの町》のゲートを出て、フィールドへと一歩、足を踏み出す。
《電子の世界の錬金術師》ヘルメス・トリメギストス百二十七世の、戦場への最初の一歩であった。
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