2『錬金術』
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
《等価交換》することで、劣化金を三つ創りだせる、と言ったところだ。一体どのような規則性があるのかは恐らくあの化け物ジジイでもないと分からないだろうが……。
もっとも、ヘルメスにできるのは本当にその中の一握り、初歩の中の初歩だ。石ころを何十個も集めてやっと金属に変えられる。錬金術を手助けしてくれる《錬金釜》があれば実に楽に自分の持つ力よりさらに高レベルな錬金術が使えるのだが、あいにくヘルメスは《錬金釜》を持っていないし、そのような代物は当然この世界には存在しないだろう。
それに、ヘルメスがこの世界にやってきた理由は《強くなること》である。一族では最弱な自分でも、この電子の世界で強者として名をはせることができれば――――そして、そのためには戦闘をこなさなければならない。当然、ダンジョンやフィールドでいちいち錬金釜などを取り出している暇はない。
「とにかく、まずはいろいろ試さなきゃならないな」
今の時刻は午後九時三十分。茅場晶彦のチュートリアルからすでに四時間が過ぎている。《βテスター》と呼ばれるプレイヤー達は、βテスト時代の記憶を頼りに、次の拠点へと動いているだろう。生き残るためにここ、《はじまりの町》を拠点にしてフィールドに繰り出したプレイヤー達も、そろそろ町に戻ってきているはずだ。
今が、《錬金術》を試すチャンスだ。
《錬金術》などという代物は、恐らく自分しか持っていない。ネットゲーマーは嫉妬深い。自分に無い力を持っているプレイヤーがいるなどと知ったら、何をしでかすかわからない。力を誇示し、名声を得ることは大切だが、それは時と場所を計算した上で、抜群のタイミングで行うべきだ。そしてそれは、今ではない。
今は準備の段階だ。自分にどれだけの力があるのか。自分がどれだけこの世界でやっていけるのか、それを確かめなくてはいけない。
「……行くか」
ヘルメスはベンチから立ち上がると、歩き始めた。向かう先は《はじまりの町》南門……ではなく、武器屋である。
《錬金術》のために、幾何か準備をしておく必要がある。ヘルメスは現実世界で、出来は良くはなかったが一応は武術の経験がある。比較的仲の良かった義兄が、剣を錬成して自分で戦うことを好む人間だったのだ。彼から《刀剣錬成》、および錬成した刀剣を使って戦う戦法を学んでいた。
現実世界の《琴音水門》は、同年代の少年の平均より少し上ほどしか運動面ではすぐれていない。当然、筋力もだ。下手をすれば平均以下の可能性もある。だが、この世界の《ヘルメス》は、かつて現実世界では小さな短剣しか持てなかった筋力をはるかに上回るそれがある。今なら義兄から
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ