第21話「試練―其のA」
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一定の距離を置いた。
「ネギ……構えろ」
「……?」
「本気で防御に集中しておけ」
タケルがまるで、今から殴り合いでも始めるかのように自然な構えに移行した。
「え……はい?」
ついていけず、素っ頓狂な声を漏らした。
「……悔しかったんだろ?」
その言葉に、ハッとした。
――タケルさん!
やっぱり、この人は凄い。
まるで自分の全てを理解してくれているかのような、そんな錯覚すら覚えさせる。ただ、ネギに屈辱を与えたったのではない。これが、タケルの言いたかったことなのだ。
時には、目的のためプライドすら捨てる必要がある。時には、プライドのために命を捨てる必要がある。
全てを覚悟してこその力。覚悟なき力など、何の役にも立ちはしない。ただ、強さのみを求めてもそれは単なる暴力でしかない。
まるで、タケルがそう言っているかのようだった。
だから彼は、今度こそ屈辱的なソレではなく、全力のソレで相手をしてくれるのだろう。
彼の意図を理解したネギが男の笑みを浮かべ、グッと構える。体内の障壁を最大限に張り巡らせ、待ち受ける。
「……行くぞ」
「はい!」
瞬間。
迫り来る黒い衝撃に
ネギの意識が刈り取られた。
朝日が階段に差し込んだ。
鳥の鳴き声と共にネギの目が覚めた。まき絵に膝枕され、アスナが覗き込むように微笑んでいる。
「う……あれ?」
動かない体を起こそうとして、腹部にとてつもない衝撃が走った。「う」と顔をしかめて、それを諦める。
――昨日はタケルさんとテストを開始して……それで……アレ?
どうにも昨日の記憶が曖昧になっている。
「あの、テストは?」
「大丈夫よ、ネギ」
「合格だよ。ネギ君」
アスナ、まき絵が順番に答え、エヴァンジェリンが会話に入った。
「フン、負けたよボーや」
稽古をつけてやるということと、中国拳法は続けておけという言葉をネギに残し、そのまま遠ざかっていく。
「ありがとうございます、エヴァンジェリンさん」
「ネギ坊主よくやったアル」
「見直したわー」
「すげーよ、ネギ君!」
そっと紡ぐようにお礼を言うネギに、観客として見守っていた他の生徒達が口々にネギを褒め称えた彼女達だったが、
「……あれ、そういえばタケルさんは?」
その言葉に一瞬で静かになった。
「……ネギが気を失ってそのまま、帰っていったわ」
アスナが言いづらそうに言葉をこぼす。
――そうか。
あくまでも彼らしいその行動に、つい笑みをこぼしてしまう。だが、ネギの思いとは裏腹に、彼女達にはタケルが相当な悪人に見え
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