第21話「試練―其のA」
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げるネギに言う。
「全力で手を抜いてやる……殴れ」
つまり、こういっているのだ。
プライドを捨てろ、と。
「あと10秒だけ待つ。それでも俺を殴れないなら――」
一旦言葉をとめて、ネギをにらみつけた。
「――お前と本気で戦う」
「た……タケル! ……どういうつもりだ!?」
エヴァンジェリンが喚いているが、最早その声は二人の耳に届いていない。
乱れた息で、じっとタケルが割った地面を見つめるネギとそのネギを観察するように見つめるタケル。
ゆっくりと。
「10――」
カウントダウンが
始まった。
カウントダウンが進む。
「……7――」
ネギが悔しそうに拳を震わせる。
確かに、今のネギがタケルに全力でぶん殴られたら魔法障壁ごと体をぶち抜かれてしまうだろう。それほどまでに圧倒的な差があった。
ゆっくりカウントしているタケルの顔をジッと見つめる。目を閉じてはいるが、まるで鬼のような形相で彼はそこに座していた。
その顔からは一切の色が抜け落ちている。
――駄目だ……本当に殺されちゃう。
「5……」
だが、子供ながらにネギも男なのだ。座っている人間を殴って試験に合格など、やはり悔しい。タケルが屈辱的に頬を差し出しているのが、拍車をかけている。
「――3」
カウントダウンは着実にゼロへと向かっている。
――今、やらなきゃエヴァンジェリンさんに魔法を教えてもらえない!
「2」
葛藤が止まらない。
嫌だ、だけど、道はそれしかない。
「……うぅ」
気付けばネギの目からは涙が。
それは情けにすがらなければ合格できないという屈辱、実力が足りていないことへの悔しさ。
あらゆる意味のこめられた涙で。
「……1」
だが、その涙はつまり、現実を受け止めたことを意味していた。
「……ゼ――」
最後の一文字が紡がれる前に、ネギのフラフラとした拳がタケルの頬をはたいていた。
「あ」
呆然とネギから声が漏れた。
自分で殴っておきながらそれでもやはり、自分が信じられないかのように声を震わせた。何事もなく立ち上がったタケルがネギの頭に手を置く。
「ネギ」
「……あ」
悔しさからか、顔を俯かせるネギに、タケルは一転して優しく言い聞かせる。
「合格だ」
「……はい」
「よく出来たな」
珍しくも、まるでねぎらわれるかのような言葉。
「……」
「今日の悔しさを覚えておけ……それがあれば、お前はすぐに強くなれる」
――俺のような人間はすぐに追い越せる。
それだけ呟き、ネギから
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