第21話「試練―其のA」
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……手加減されても……意味がない?」
今度はブツブツと呟き始めた。ネギがふらふらになりながらも拳を放ち、だが、無造作につかまれ、そのまま回し蹴りをわき腹にもらい、弾き飛ばされた。
「……いいだろう」
すっと、タケルの表情の色が抜け落ちていく。
もちろん、稚拙な武術へのフラストレーションもたまっていた。ネギが、弟子入りテストという厳かなでなければならない場に観客を、しかもほとんど無関係の人間までも、連れてきたということへの苛立ちも溜まっていた。
ガムシャラに、無我夢中で強さを求めていると。恥も外聞も捨てて、それでも強くなりたいと願っていると。ずっとそう思ってきた。だから、ネギの今までの行為に怒りの矛先を向けようとは思っていなかった。
だが、違った。
――ネギは、目の前にいるのは、ただのガキだった。
やっとの様子で立ち上がったネギに、容赦なく拳を振り下ろした。拳は反応の出来ていないネギの頬を掠め、地面に突き刺さる。コンクリートで固められていた地面は、まるで発泡スチロールのように容易く貫かれ、周囲に亀裂を走らせていた。
「……へ?」
誰からだろうか、間抜けな声が聞こえた。
「手を抜かれても意味がない……だと?」
タケルの静かな声が一帯に反響する。
意味の有無は試験の合否でしかないはずだ。過程など、結果からすれば何の意味も果たさない。手を抜かれたくないなど、それはネギの驕りだろう。
「……」
かつてなく、向けられた厳しい目つきに、ネギはごくりとつばを飲み込んだ。
「エヴァに弟子入りを志願しておきながら、勝手にクー・フェイさんに弟子入りを果たした」
チラリとクーに視線を向ける。
それはエヴァに対する侮辱でしかない。
「厳かな試験に、なんの重要性も持たない観客を連れてきた」
視線は、観客全員に。
それは、試験に対する冒涜でしかない。
「それだけの勝手をして、挙句お前のちんけなプライドを守るのか?」
それは、何よりも強さへの否定でしかない。
つまり、ネギは結局、恥も外聞も捨てて強くなりたかったわけではない。明確な覚悟があって強くなりたかったわけではないのだ。
「お前は何のために強くなる?」
「何の……ため?」
「大事なことは何だ? お前のその訳の分からないプライドを守ることか? それとも試験に合格することか?」
タケルの、淡々と紡がれる言葉に、ネギはハッとした顔を見せ「合格すること……です」
苦々しく答える。
「本当に、そう思っているか?」
「……はい」
――だったら。
小さく呟き、タケルは座り込んだ。
「え?」
訳がわからず首をかし
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