六幕 張子のトリコロジー
2幕
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「……も、大丈夫だよ」
「うん。もちろん」
フェイは気づく。ジュードの横顔を見つめて、レイアがひどく――苦しそうな、締めつけられたような、コトバにできない表情をしていた。
麓にあるニ・アケリアという村に行くという方針になって皆が歩き出した。
「レイア」
フェイはレイアの腕にしがみついた。そうしている間に、最後尾のジュードの背中が階段の向こうに消える。
「どうしたのよ、フェイ。怖くなっちゃった? ルドガー呼ぶ?」
ぶんぶん。フェイは首を振る。
「笑わないで」
「え」
「レイア、イタイのに笑う。ジュードのことでイタイのに、ダイジョウブって言う。そんなのだめだよ。さっきローエンがね、『イタイ時はイタイと言っていいんですよ』って言ってくれたの。だからフェイ、いっぱい泣いたの。レイアもイタイなら泣かなきゃだめ」
レイアはパロットグリーンの瞳を落としそうなほど見開いた。
「……違うよ。どこも痛くなんかないよ」
「ウソ」
「嘘じゃないよ。痛いっていうより、うん、切ないんだ、わたし」
「セツナイ?」
レイアはフェイの胸の谷間に手を当てた。
「ケガしてなくても、悲しいことがなくても、ここがぎゅーってすること。切ないっていうの」
「セツナイは泣かなくていい?」
「うーん、泣いちゃう時もあるけど、今は泣きたいほどじゃないかな」
レイアは綺麗に笑った。その笑顔を見れば、レイアが嘘をついているわけではないと分かった。
フェイはレイアから手を離した。
「ありがとね。――行こ。早く行かなきゃ置いてかれちゃう」
「! ヤダっ」
「大丈夫。もうしそうなっても、わたしが付いてるからね」
「……よかった」
レイアがフェイと手を繋いでくれた。自分と変わらない大きさの手なのに、とても安心できた。
フェイたちは先に行ったルドガーたちに追いつき、山道を抜けて、ジュードが言ったニ・アケリア村に入った。
「村」というコミュニティを教科書でしか知らないフェイは、あちこちを見回した。一面の芝色。乾いた草のにおい混じりの風。澄んだ青色の空を見上げる。何もかもが目新しかった。
そうしながらルドガーたちに付いて歩いていると、明らかに村から浮いた一団に出会った。
他でもないエルたちだ。
「お姉ちゃん!」
フェイはいの一番に駆け出し、小さな姉に抱きついた。
「わっ、フェイ?」
(あったかい。息してる。元気だ。よかった――よかった)
「……泣いてるの?」
「うん。泣いてる。お姉ちゃんが、元気だから」
すると、エルの手が背中と頭に回った。頭を撫でられる感触。
「よしよし。お姉ちゃんはダイジョウブだよ。フェイ、泣
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