第20話「試練―其の@」
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この世界に来てからこの行動は、初めてだった。
――今まで楽しかったから……か?
フッと微笑む。
以前の世界にいた時と比べて親切すぎる周囲が主にその原因だろう。一人で目を閉じたまま、思いを馳せていると後ろから声をかけられた。
「タケルか、こんなところで何をしている?」
「……エヴァ?」
目を開け、振り返ると、そこには確かに彼女がそこで立っていた。隣では茶々丸が、ぺこりと頭を下げている。その頭には乗っているのは人形……だろうか。
小さな蝙蝠のような翼を生やし、可愛らしくもどこか毒々しい姿が妙にタケルのツボを掴んだ。ジッと見つめてしまいそうになる自分を誤魔化すように挨拶を交わす。
「お、おはよう。こんな早くから仕事か?」
「まぁな……お前は?」
当然のように頷く彼女の問いに「散歩だ」と簡単に答える。
「ケケケ、マルデオッサンミタイナ趣味ダナ」
「……え?」
――エヴァでも、絡操さんでもなかった?
「オイ、コッチダ。テメェノ目ハ節穴カ」
――……となると。
ギギギと視線を動かし、その唯一の可能性の存在に目を凝らす。
「ヤット気付イタカ。御主人ノ評価ガ高スギルンジャネェカ?」
「茶々ゼロ……お前」
茶々ゼロという名の人形に呆れたように首を振るエヴァの姿が印象的だ。
「茶々ゼロって……いうのか?」
これに答えたのは、じっと黙っていた茶々丸だった。
「はい、猛先生……私の姉がご無礼を」
無機質に、そして申し訳なさそうにお辞儀をする彼女の言葉を、だがタケルは全く聞いていなかった。
ブルブルと体を震わせ、ジッと茶々ゼロを見つめている。
「……お、おいタケル?」
「……猛先生?」
「ナンダヨ、ソンナコトデ怒ッタノカ」
――気ノ小セェヤロウだ。
吐き捨てた人形のような彼女に、ついにタケルの我慢が限界に達した。
正に神速。恐らく、タケル史上、最速を突破したことだろう。
大地を踏みしめた音が響いたことをエヴァたちが知覚した時には既に茶々ゼロをその腕に抱えられていた。
「な」
――茶々ゼロが潰される。
反射的にエヴァと茶々丸が戦闘態勢に入ろうとして、
「可愛いっ!!」
タケルのとろけた声が聞こえた。
「「……は?」」
「ちゃ、茶々ゼロっていうのか……可愛すぎるだろ。え、なんだろ……コレが世に言う至高の存在っていうんじゃないのか? うわ、本気かよ、何って可愛さだよ、おい。反則だろこれ。レッドカードものじゃね、退場処分じゃね? っていうかむしろ殿堂入りだよな、コレ。いや、可愛いってマジで可愛い、っていうか可愛すぎだろ……いや、っていうか――」
「オイ、暑
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