第百四十八話 伊勢長島攻めその六
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それでだ、彼はこうも言ったのであった。
「門徒達が坊主達の話を聞かずに篭るならわかるが」
「しかしですな」
「こうしてあそこにいるのは普通の門徒ではないとなると」
「灰色の旗も服も見えませぬ」
「それも一人も」
本願寺は一向一揆の時には灰色の旗を飾りその旗と同じ色を着て立ち上がるのだ、それで門徒かどうかがわかるのだ。
しかし彼等は違う、それで信長も言うのだ。
「どうもな」
「おかしいですな、確かに」
「本願寺の門徒達かどうか」
「そこがわかりませぬ」
「そしてです」
ここで言ったのは明智だった、彼は怪訝な顔で信長に言った。
「殿、若しや」
「うむ、何じゃ」
「ここには織田家の諸将と十五万の兵がいます」
「主だった者が全てな」
「その分他が手薄になっています」
「わかっておる、それはな」
信長にしてもだというのだ、このことは。
「四国は鬼夜叉、近江は与三と浅井の者達、摂津等は勘十郎や三郎五郎に任せておるのじゃ」
「そうして各個に叩いていきますな」
「しかしじゃな」
「はい、ここでわざと時間を取らせ」
「その間に他の場所がか」
「蜂起が酷くなっていくのでは」
この危惧を語るのだった。
「我等をこの伊勢に足止めをして」
「ではか」
「はい、この城もです」
長島城を攻めるのもだというのだ。
「すぐに終わらせた方がいいかと」
「ではどうすべきじゃ」
「まず降る様に進めましょう」
この長島城をだというのだ。
「そしてそれが駄目なら」
「一気に攻め落とすか」
「今は雨が少なく空気が乾いています」
明智は己の顔が強張るのを感じていた、そのうえで先を言おうとした。
しかしここはだ、あえて信長が言った。
「火計にしようぞ」
「?殿」
「決めた、ここは火計じゃ」
明智が言うより前にだ、察した信長は言ってみせたのだ。
「そうするぞ」
「ですか」
「長島城には二万の敵がおる」
この数からもだ、信長は言うのだ。
「二万の敵が篭る城は然程堅固でなくとも攻めれば時がかかり兵を多く失う」
「だからですか」
「ここは」
「そうじゃ、火で一気に焼く」
そうして一気に攻めてそのうえで兵も失わないというのだ。
「そうするぞ、よいな」
「また苛烈ですな」
「火で一気に焼くとは」
「仕方ないわ、降らぬのならな」
そしてここで戸惑ってはというのだ。
「攻めるしかないからな」
「だから火で一気に焼いて」
「そうしてですか」
「近江に向かう」
森と浅井家の者達が頑張るそこにだというのだ。
「わかったな」
「はい、そして与三殿をですな」
「お助けするのですな」
「それから状況次第じゃが」
どうするかと、信長の目が光った。そのうえでの言葉だ。
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