第百四十八話 伊勢長島攻めその五
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「我等はもう」
「戦わぬか」
「はい、降ります」
そうすることを誓うのだった、彼等も。
「そうさせてもらいます」
「わかった、それではな」
「我等のことは構いません」
命を奪ってもいいというのだ、だがそれでも言うのだ。
「ですが門徒達は」
「あの者達に罪はありませぬ」
「ですからどうか彼等の命だけは」
「それだけは」
「わかっておる」
信長の返事は一言だった。
「そのことはな」
「では宜しいのですね」
「門徒達の命は」
「言った筈じゃ、わしは歯向かわぬ者には何もせぬ」
そして降った者にはというのだ。
「門徒達は武器を我等の陣の前で全て捨てた上でじゃ」
「それぞれの村にですな」
「帰れと」
「うむ、そうせよ」
まさにそうしろというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「今より」
「無論御主達の命も取らぬ」
このことも約束する信長だった。
「もう一揆なぞ起こさずにな」
「信心に生きよと」
「そう仰るのですか」
「顕如殿にもお伝えせよ」
本願寺の法主である彼にもだというのだ。
「この戦のこととわしが言ったことはな」
「わかりました」
「ではその様に」
「そうせよ、わしは歯向かうならば容赦せぬが」
だがそれでもだというのだ。
「しかし大人しく田畑を耕すならば何もせぬわ」
「ではそのその様に」
「法主様にも」
彼等も約束する、こうしてだった。
願証寺もその中にあった武器を全て信長に渡し門徒達もそれぞれの寺に去った、伊勢長島の本願寺最大の寺もこれでことを収めた。
しかし戦は終わりではなかった、信長に藤堂が言って来た。
「殿、長島城ですが」
「あの城か」
「降ろうとしませぬ」
「あの城だけはじゃな」
「はい、どうしてもです」
城を明け渡そうとしないというのだ。
「全く」
「では仕方がないな」
その話を聞いてこう言う信長だった、そしてだった。
居並ぶ諸将達にだ、こう告げたのだった。
「ではな」
「はい、わかりました」
「では今より全軍で、ですな」
「長島城に向かい」
「そして攻め落としますか」
「そうしましょうぞ」
こう話してそしてだった、彼等はというと。
すぐに全軍で長島城に向かった、長島城はそれ程大きくはなくさして堅固でもなかった。だがその城の中には。
旗が立てられていた、その旗はというと。
「灰色の旗ではないな」
「ですな、ここでも」
「本願寺の旗ではありませぬ」
「模様は本願寺のものですが」
「それでも」
諸将も信長に話していく。
「今度もですか」
「またおかしなことに」
「そうじゃな、おかしなことじゃ」
全くだとだ、こう言う信長だった。
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