第百四十八話 伊勢長島攻めその三
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「武器を捨てて」
「そうしてですか」
「そうされよ」
「そうすればですか」
「命は奪わぬ、それぞれの村まで帰るのだ」
そうしろというのである、使者もそれを聞いてだった。
城に立て篭る門徒達は皆武器を捨ててそのうえで皆城を出た、だが明智はまだにこりともせず使者を呼び言うのだった。
「まだ足りぬ」
「まだですか」
「城に篭っている者はいるか」
「おりませぬが」
「武器は全て城の正門の前に置くのだ」
そうしろというのだ、今度は。
「よいな」
「そうさればですか」
「うむ、わかったな」
「では」
使者はここでも明智の言う通りにした、そしてだった。
彼の言う通り城の正門に武器を全て置いた、どれも鍬や竹槍といったものばかりだ。そうしたものを置いてだった。
城の中もくまなく探し中に誰も残っていないことを確認した、そこまでして明智の下に三度向かったのである。
そしてあらためて明智にだ、こう言ったのだった。
「これで宜しいでしょうか」
「ご苦労だった、それではな」
「はい、ではこれで」
「もう馬鹿なことをしてはならぬ」
決して、とだ。明智はこのことは釘を刺した。
「よいな」
「わかりました、それでは」
「後は村に帰って御主達の仕事に励め」
明智は確かな声で使者に告げる。
「ではその様にな」
「畏まりました」
使者も明智の言葉に頷きそうしてだった。
城に篭っていた門徒達は全て村に帰され明智は城に入った、その彼に細川が言った。
「また慎重でしたな」
「はい、若し一人でも不心得者がいれば」
「それで、ですな」
「他の者も断ぜねばならないので」
それで慎重に慎重を期したというのだ。
「使者にもああ言いました」
「左様でしたか」
「上手くいって何よりです」
こうも言う明智だった。
「まことに」
「ですな、本当に」
「これでこの城はよしですな」
「一つ無駄な血が流れずに済みました」
「本当によかったです」
細川と筒井も言うことだった、彼等にとって本当にいいことだった。この城は完全に織田家のものになったのである。
他の城もである、それぞれの将達が説得し開城させていっていた。門徒達は大人しく村に帰っていっていた。
柴田のところもだ、彼は開城させた城に入りその大きな口を豪快に開けて笑いながらこう言うのであった。
「よかったわ、一揆とはいえ民百姓を手にかけるのはな」
「まことの武士ではない」
「そうですな」
「うむ、わしの相手はあくまで刀なりを持つ者達だけじゃ」
こう言うのだった、前田や佐々にも。
「だからじゃ」
「いやいや、しかし権六殿の大音声には参りましたなあ」
ここで慶次も言う、彼も柴田に同行しているのである。
「全く以て」
「御主
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