A's編
第三十一話 裏 中 (なのは)
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ロノだけではあるのだが。
なのはにとって八神はやてとは、どうでもいい存在に近かった。
むろん、翔太が毎日彼女の家に泊まっているという事実は腹立たしいことこの上ないし、翔太を家族のように扱うことも何様だと思うし、翔太が出迎えてくれるときさえ隣にいるところがイラッとくる。
だが、それでもなのははあの親友を騙るあの金髪や敵でありながらがのうのうと義妹になっているあの黒い金髪のようにはやてのことを忌々しい存在とは思っていなかった。
―――なぜなら、彼女は下半身を動かすことができない障がい者だから。
はやてを介護するために翔太が近くにいるのであれば―――彼女には家族がいないことはなのはも知っている―――それは正しいことだ。どこからどう見ても、百人に尋ねても百人が『良いこと』、と答えるだろう。だから、そこに翔太がいることは無理のないことなのだ。
この作戦が終われば、彼女の下半身不随も治ると聞いている。ならば、その時、はやては翔太にとってクラスメイトと同じく有象無象の友人になるだろう。ならば、彼がそんな態度になっているのは今だけなのだ。
はやては、なのはのように『魔法』という特別な絆でつながっているわけではない。今は、その彼女の境遇が味方しているだけなのだ。だから、なのはがはやてを気にする理由はどこにもない。翔太が『良いこと』をするのであり、その手助けができるのであれば、なのははお手伝いをするだけだ。
結局、なのはは、今の境遇を言い訳にして心の安寧を図っているだけだった。
閑話休題。
なのはが、翔太たちが廃ビルの屋上へと現れたのを確認してから五分程度が経過した。今は、状況を説明しているだけのなのだろうか、クロノの口が動いている以外は特に様子に変化はない。クロノが持っている闇の書に何も変化はないし、闇の書への封印処置を開始するような様子も伺えない。まるで、休み時間に会話する学生のように彼らは口を動かしているだけであった。
『Master. It's strange』
奇妙だと言われてもなのはにはよくわからなかった。三人が話している。五分間も同じように? 確かにレイジングハートが言うように奇妙ではある。だが、今回の内容について説明しているのであれば、奇妙であると断定することはできない。
今しばらく様子をうかがうべきか、と思った次の瞬間、今まで鮮明だった画像がちらつく。そして、一瞬の砂嵐の後に現れた映像は、今までと同じ場所を映し出しておきながら、全く別の様相を映し出していた。
翔太が倒れ、横に立っているはやてが怯え、そして、クロノが嗤っている姿だ。
『Jamming』
なるほどなるほど、どうやら今まで映像が変化しなかったのは、何らかの妨害が働いていたらしい
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