イオリ・スーゼウィンド
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る。
「表情もいつも通りだし、匂いもいつもと変わらんのだが・・・」
「匂いで判断するのやめない?」
思わずルーシィがツッコむが、ヴィーテルシアはスルーする。
「濡れていた」
「へ?」
「は?」
「え?」
よく解らない言葉を一言発せられ、その場にいた全員が首を傾げる。
濡れていた、だけでは何が濡れているのか解らない。
水を操り、体を水へ変えられるティアが川か何かに落ちて濡れるとは思えないが、それ以外で何が濡れる?
「頬が」
「頬?」
こくんとヴィーテルシアは頷く。
頬が濡れる―――つまり―――――――。
「泣いて・・・た?」
頬を濡らせるのは、己の流した涙だけ。
川に落ちたとすれば、全身が濡れていなければおかしい。
顔を水につけたとしても、額や前髪が濡れるはず。
が、この視力の良い狼は、ご丁寧に「頬が濡れていた」図を見ていた。
「泣き喚く訳でも、泣き叫ぶ訳でも、泣き声を上げる訳でもなかった。ただ静かに、声を出さずに泣いていた」
ティアらしい、と何人もの人間が思った。
彼女は怒り以外の感情を滅多に見せない。
苛立ち、怒り・・・その手の感情なら簡単に見せるが、笑顔や泣いた顔を人に見せる事はない。
「隠している」のではなく、「出さないのが当たり前」なのだ。
「・・・何があった。ティアを泣かせたのは誰だ?場合によっては、あのシスコンに告げる」
背筋が震えた。
シスコン・・・の自覚はなく、指摘されると怒るクロスは、チームメイトと仕事に出ている。
あの、この世の女は姉しか見えていないような、超がいくつ付いても足りない程にシスコンなクロスに知られれば、爽やかすぎる笑顔で上空に無数の剣を展開されるだろう。
そして自覚がないのが恐ろしい。
「本来なら、俺が泣かせた奴を殴ってもいいんだが・・・生憎、俺は自分の手は汚さない主義なんだ」
ぐるるる、と狼らしく唸り声を上げるヴィーテルシア。
その時、ナツがゆっくりと立ち上がった。
「ナツ?どこ行くの?」
「・・・ちょっと、頭冷やしてくる」
「あ?オメーの頭は冷やせねぇんじゃねぇの?常に燃え盛ってんだからな!」
グレイが通常通りの嫌味を言うが、ナツは全く答えない。
「・・・?何だアイツ。調子狂う・・・」
「珍しいね。ナツがグレイの嫌味に突っかからないなんて・・・」
「ナツもさすがに反省してるんだろう」
「あのナツが!?反省!?」
様々な言葉が飛び交う中、ナツはギルドを後にした。
「・・・はぁ」
マグノリアが一望できる丘に、ナツはいた。
近くの座れそうな岩に腰掛け、溜息をつく。
「・・・んで、バレちまったんだ・・・?」
くしゃっと桜色の
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