夕焼けは朱を深く刻む
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は、草からの報告を洗いなおしたら予想出来た。戦の最終日に秋兄が公孫賛と宴の為に接触してたらしい。その時以外に公孫賛陣営への怪しい接触は無かったから秋兄からの打開策提示で確定だと思う」
「うへぇ……なんてめんどくさい事してくれるかね、あのお兄さんは」
顔を顰めながらべーっと舌を突きだして心底めんどくさそうに言う。
一人の男を思い出して、遠い所を見つめる明の思考に薄暗いもやが掛かった。
劉備軍に居ながら全く違う思考を行うその男は、自身の、今やたった一つの大切なモノを変えてしまった。
良い変化と悪い変化、その二つを齎したのだ。
以前の、大切なモノが傍に在った時の、袁家筆頭軍師にのし上がる前の夕に引き戻した事には感謝の念が湧くが、同時に甘さを与えてしまった事に苛立ちを感じていた。
夕は己が主の変化を望んだ事によって虎牢関までの非情さは顔を出さなくなり、他者を利用するのに少しばかりの躊躇いの線引きを行うようになった。
人としては……まさしく正しい。
だが明の同類としては……間違いである。
今の夕は眩しく、受け入れにくい。
どんな手段を使おうとも大切なモノを守りきる。それが明と夕であったはずなのに。
もちろん線引きはちゃんとしてはいるが……最後に必要とあらば非道にも畜生にも落ちるのがかつての二人だった。
そんな彼女達をして同類と言わしめた一人の男に対して、明は無意識の内に舌打ちが漏れた。
どうして同類なのか、それは誰も気付かない事だろう。件の輩は、驚くことに大陸を平穏に出来たらそれでいいのだ。
主に忠を示さず、大切なモノ、彼にとっては後の世に生き残る人々に平穏を与えられるなら、自分が最終的にどうなろうと、自分がどう思われようと、今生きる民をどれだけ殺そうがそれでいい。
そんな者は頭のネジがぶっ飛んでいるとしか言いようがない。自分達と同じく、どこかしら壊れてしまっているか、心の形が歪になってしまっている。
では何故、彼女達の思考の中では、似たような曹操や劉備が同類では無いのか。
その理由は自分が入っているか入っていないかの違いが決定的である。
秋斗は自分有りきでは無く、曹操や劉備は自分有りき、それだからこそ同類では無い。捉え方が違うだけで曹操や劉備とも同類と呼べるが、彼女達にとっては大きく違うのだ。
劉備は特に秋斗に近いが、結局最後は自分が有りきの世界で完結してしまうので不可能。
敢えて言うならば、洛陽で死の覚悟を決めた月こそが秋斗と同じ存在だと言える。常時そんな状態である者はまさしく異端だろう。
今の夕はもはや、秋斗や明と同類では無い。夕は自分が居ないと世界は成立しない。そんな事は明も口に出しはしないが。
ふと、思考を回すのを辞め、夕を見た明は……絶句した。
夕も同じ人物の事を
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