夕焼けは朱を深く刻む
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にそちらも大切じゃの。ならばそれが行われてから、機を見てでよかろう」
舌打ちを一つ、郭図は一瞬田豊を睨んだが、すぐにまた薄ら笑いを浮かべた。
「ではそのように、早めに離反を示しましょうか。事を起こすのはその時機という事で。それと……曹操に対しての情報収集は私が担当しましょう」
「任せたぞ、郭図」
「ああ、重ねてもう一つじゃ。公孫賛に対して進行する軍の軍師は郭図とする。あの成り上がりは完膚なきまでに叩きのめしておかなければ気が済まんからの」
一人の、そんな発言に田豊の表情は絶望に堕ちた。
郭図が担当するとなると公孫賛の取り込みは万に一つの希望も持てない。固まった思考をフル回転させてどうにか阻止しようと口を開いたが、
「任せてください。所詮、運が良かっただけの凡人です。必ずや叩き潰して差し上げます」
郭図に遮られ、確定してしまった。
これ以上己が意見を通そうとすると自分の立場がさらに悪いモノとなり、何も出来なくなってしまう。
疾く、理解した田豊は口を紡ぐ。現状、彼女には打つ手が無かった。
これにて会議を終了とする、との一言でその場は締められ、全ての人が出払ってから幾分、重い足取りで田豊は会議場を後にした。
「夕、おつかれー」
会議室から出てきた夕を見て、明は快活な声を掛けた。
しかし、信頼を置く友である彼女の声にすら反応せずに夕はそのまま歩き続けて行った。
その様子を見て明は異常な事態が起こっていると気付き、夕の元へ駆けて行き、後ろから抱きついた。
「っ! 明? どうしたの?」
抱きつかれてから漸く明の存在に気付いた夕は普段通りの無表情を向ける。
「夕こそどうしたのさ? あたしが声掛けても聞こえないなんてよっぽどじゃない?」
「……ごめん。考え事してた」
一つ謝り、明の瞳を覗き見る。そこには心配の色が深まっていた。
「あのクズが私と同じ権限を持った。そして公孫賛との戦にはあいつが行く」
「ふーん、そっかぁ。またあいつが邪魔するんだ」
話を聞き、すっと目を細めた明から殺意が溢れ出る。憎しみの感情は彼女の心を埋め尽くし、今すぐにも殺しに駆けだすのではないかと思える程。
夕は向き直り、明の身体に小さな腕を回し、力いっぱい抱きしめた。何かを語る事はせず、ただ無言のままで。
そんな夕の対応に明の殺意は収まっていく。
「大丈夫。確かにあいつは殺したいけどさ。それより……公孫賛に攻めるのがバレてたってホント?」
頭を撫でながら自分にも言い聞かせるように言葉を紡ぎ、明は最後に質問を投げかけた。
「うん。公孫賛の連合参加は私達からの理由づけを防ぐためのはずだからこれ以上は警戒を強めないと思ってた。けど……先読みされてた。
優秀な軍師もいないあの勢力がどうやって読んだのか
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