夕焼けは朱を深く刻む
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」
「あれあれぇ? いいんですかねぇ? 私が仕込んだ毒のおかげで、公孫賛の動向が手に入ったというのにそんな事を言って」
笑みを深くした郭図が告げると田豊の表情は苦く歪んだ。
田豊が提案した大陸統一の為の長期戦略は外回りをじわりじわりと埋めて行くモノで、対して郭図が提案したモノは内側から早々に広げて行くというモノであった。
袁家上層部が選んだのは田豊の戦略。
理由は、何よりもまず家柄の薄い公孫賛を潰したいという下らない拘りから。身分の低い親から生まれた公孫賛が力を強めているという事実を認められないが故に。
田豊の本当の狙いは袁家自体の打倒である為、いち早く公孫賛を手に入れたい。そして彼女は公孫賛を懐柔し、幽州平定の名目で袁紹を本拠地から引き離すことも考えていた。
内に思考が向きやすい公孫賛には今のままで十分だろうと判断した田豊はこれといって手を打とうとしなかったのだが……しかし今回、公孫賛の行動は迅速であった。
情報の秘匿も十分で、気付かれない内に休暇の名目で関靖を曹操の元に使いに出していた。
公孫賛が曹操と密盟を結ぼうとしている。袁家の侵略に対抗する為に。
毒からのこの情報が無ければ……知る事の出来なかった深い情報を得なければ、今回の会議は起こりえない。
「あなたの考えた策は素晴らしいモノでしたが、筆頭軍師の名に浮かれて油断してるんじゃないですかぁ? どうです? この様では大陸制覇なんて危ういモノだと思いませんか?」
会議場に座る上層部の面々を見回し、声を高らかに上げた郭図はそれぞれに頷いて見せる。
「そうじゃのう、田豊よ。ぬしは少し己が才に溺れておる」
「まさしくですな。これを機に、軍師の体制を見直すとしましょう」
「では、甘さを持たぬ郭図と二人にすれば上手く行くのではないでしょうか?」
「おお、名案じゃ。今までの行いを評価すればそれが妥当じゃろう」
口々に上層部の者達は発言し、かくして、いとも簡単に袁家の筆頭軍師は二頭体制となった。
これこそが郭図の今回の狙いであり、その為に前々から上層部の者達に仕込みを行ってきた。それに気付いた田豊は拳を握り、歯を噛みしめて俯く。
「ありがとうございます。では……毒からの追加情報が入り次第、事を起こすというのはどうでしょうか?」
続けられた郭図の提案にばっと顔を上げた田豊は焦った表情で口を開く。
「それはダメ。せめて偽りの離反を示してからでないと他の策が潰れてしまう」
その発言に上層部の皆は一様に難しい顔をして思考に潜り込んだ。
袁家は現在、大陸に二つ構えている。
袁紹と袁術、どちらも傀儡としてではあるが国を治める主として政事を行っていた。
田豊はこの一点だけは譲れないとばかりに悲痛な面持ちで上層部の面々を見つめ続ける。
「ふむ、確か
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