Introduction
第十五話 学園最凶
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は別の因縁があった。
試合は既に始まっているが、しばらく両者は動かない。いや、紫苑に限って言えば動けなかった。初めて感じる、自身に向けられた明確な殺意。それに竦んでしまっていた。彼も楯無から焔のことはある程度聞いていたので知ってはいるのだが、焔は既に人を殺したことがある。しかしそんな人間と相対することなどそうそうあるはずがない。
一方の焔は敢えて動かず、身を少し屈めて鞘に納まる刀剣型の武装に手をかけている。それはまさに居合いの構え。
彼女は専用機は持っていない。しかし、これは珍しいことではなるのだが専用の武装を所持している。それが彼女の刀剣型武装『村正』だ。立場上、専用機を用意することができなかったため、コアが必要ない武装に目をつけたのだ。妖刀としても名高い名刀村正、その一振りが橘家にもあった。彼らはそれをベースにIS用の武装を作らせた。それが彼女の専用武装だ。IS用の武装とはいえ、一般的なものと比べると全長1mほどと小さくベースとなった村正とあまり変わらない。普段は許可のもと、IS学園に保管してもらい必要な際に自身の操縦する訓練機にインストールする形をとっている。
妖刀がベースになっているからか、扱う人間が彼女だからか、はたまた両方かはわからないが、構えを取る彼女からは禍々しい瘴気すら感じる。容量をほぼ使い切ってしまい、それ以外の武装が使えないがその分威力は凄まじい。焔の技術も相まって、その一太刀は今の紫苑の全力をも上回る。
彼女が動かないのは、紫苑も近接武器しかないことを知っており、なおかつ攻撃の速度や威力、技量では自身が上回ると確信があるからだ。そして紫苑もそれを察したことから動けない。故に試合はこのまま膠着状態になると思われた。
(千冬さんや楯無さんの話、そして目の前に実際に見てみると……隙が無い、確かに強い。動かずにその場にとどまっているのは、僕が近接しかないことと、月読の機動力を警戒してか。なら向こうから動くことは……えっ!?)
紫苑だけではなく、見ている誰もがそう思っていた。しかし、先に動いたのは予想に反して焔だった。
『いややわぁ。そないに警戒せんといて。ちょい遊ぼぉなぁ』
ゆらり、と静かに動き出す。醸し出す雰囲気はそのままに、だが構えは緩めて紫苑に向かって歩き出す。紫苑もすぐに動こうとするが、まるで金縛りにあったように体が動かない。その間も焔はゆっくりと近寄ってくる。
「あ……くっ」
『ほな、行きますえ』
その距離がある程度縮まったとき、焔の動きが変わる。ゆったりとした歩きから、地面を蹴り出し一気に加速する。当然、訓練機の性能の域を出ないそれは紫苑にとっては十分に反応できる速度だった。故に、次の一手への反応が遅れる。
『そっちゃあらへん』
紫
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