第一部
第二章
負けないから。
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らなくて、結局自然消滅しちゃって…」
「だから、俺達、今、謝りたいんだ。ごめん。」
「ごめんなさい。」
二人は頭を下げた。祐二は当惑した。もうほとんど、忘れかけてたようなことだった。それでもたしかに、こうされると、なにか胸のつっかえが下りるような気がした。
でも、もうどうでもいい。終わった。天野も長浦も、大切な友達だ。
「いいんだよ。そんなこと。それに、二人のおかげで…」
「ねえ、恥ずかしいよ…」
真里が、祐二の袖を引いた。けれど、こんなところで中途半端に終わるわけには行かない。祐二はすぐさま真里の手を握った。真里がビクッとするのがわかった。長浦と天野も、いや、クラスメートみんなが、目を丸くしていた。でも、それでも、言うことは最後まで言わなきゃいけない。あとで後悔しないように、生きていくんだ。
「二人のおかげで、僕たち、一緒になれたんだ。同じ気持ちでいるって、確かめられた。だから、ありがとう。二人のおかげで、今、幸せなんだ。」
言い終えると、なんだかすっきりした。クラスみんなが、優しい目つきになった。もやもやと残っていた鬱憤が消え去り、完全に、心が通じたのがわかった。
「はい。部外者はここまで。準備。準備。」
一樹が声を掛けると、クラスのみんなが列を成した。拍手で、真里を送るのだった。祐二も慌てて並んだ。
「みんな、ありがとう。うっ…うっ…」
真里はついに泣き出してしまった。それでも、笑顔はそこにあった。悲しい涙じゃ、ないからだろう。
拍手が始まった。クラスの列を眩しそうに、真里が歩いて行く。両手に花束と色紙を抱えて、女友達と別れの言葉を交わしている。確実に、開け放たれた教室のドアへと遠ざかって行く。改めて、真里が遠くへ行ってしまうのだ、と祐二は実感した。
真里が教室を出ると、教室には静寂が訪れた。
「終わったか?」
突然、坂原先生が入ってきた。そうだ。そういえばまだ五時間目じゃないか。
「終わったみた…っておい。王子が残ってんじゃねえか!」
坂原先生が、自分を見ていた。そのまっすぐな批判の目に、祐二はたじろいてしまった。
「行ってこいよ。祐二。」
直哉も続けた。
「え、でもまだ授業が…」
「俺は、エスケープは許さん。」
坂原先生が言うと、クラスから「えっー」と声が上がった。
「だが、お姫様をたった一人で出て行かせるのは、もっと許さねえ。」
「はい。行ってきます。」
祐二は頷いた。そうだ。真里はきっと、僕を待っている。行かなくちゃ。
拍手の響く教室を背に、祐二は真里を追った。
真里は靴箱で靴を履き替えていた。
「あ、祐二。」
真里は手を振って迎えてくれた。
「待たせたね。」
祐二はそう言いながら、自分も靴を履き替えた。
「あれ、授業は…」
「どうでもいい。」
「え?」
「真里と
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