第一部
第二章
負けないから。
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どこで、どんな環境下でも想い合えることはね。それは学生も大人も、同じことです。」
祐二はそう言われて、少し頬が火照った。叔父はそれに気付いたらしく、優しそうな笑みを浮かべた。
「可能性無限な祐二君は、これからもどんどん愛を培っていってください。」
叔父はそう言うと、玄関へ向かった。
「ありがとうございます。」
祐二は大きな声で言った。
別れの日の前日、クラスではお別れパーティーがあった。
なんと、祐二にまで隠されていたサプライズパーティーだった。昼休みのあと教室に行ったら、気がついたのだ。
「これから、真里さんのお別れパーティーをします。」
いつのまにかパーティー用に準備された教室で、一樹が、相変わらずのてきぱきした口調で言った。
天野が花束と色紙を持ってきた。凄く単純な筋だったけれど、真里の目には早くも涙が浮かび始めていた。
「真里ちゃん。二年間、本当にありがとう。短い時間だったけれど、宝石みたいにキラキラした毎日を、私達は真里ちゃんにもらいました。いつも笑顔で、元気な真里ちゃんが、私達は大好きです。ずっと元気でいてね。私達、ずっと真里ちゃんを忘れません。
それから―」
天野の言葉がやにわに止まった。すると突然、長浦が前に出てきた。
「一つ、言いたい。」
唐突に長浦は切り出した。なんのことか、とクラスはどよめいた。
「祐二、ちょっと、前に出てくれるか?」
祐二は言われるがままに前に進み出た。机と教卓を後ろに下げて生まれた空間は、踏み入ってみると意外と広かった。広漠な世界に踏み入ってしまったような気がしたけれど、真里がいたから、そんなに不安ではなかった。
真里と並ぶと、急に祐二は気恥ずかしくなった。まだ付き合ってもいなかったころ、クラスで、祐二達にはいろいろな噂が立った。噂の是非は差し置いて、二人の動静は一応周りには隠しているつもりだったので、急に秘密を知られたようで、もじもじせずにはいられなかった。
真里を見ると、驚くべき事にじっとしていた。いつものように微笑んでいる。強いな、と祐二は思った。そして負けじと、祐二も悠然とした態度で直立した。目の前にいる長浦を、まっすぐ見つめた。
「七月の頭にさ、俺達、二人のことからかったよな。付き合ってるとかなんとか噂広めて、いろいろ馬鹿なことして、二人を傷付けた。あのとき祐二怒鳴ったよな。『取り残されないために、人を取り残してる』って。そのとおりなんだよ。」
長浦の突然な懺悔は、二人を驚かせるには十分だった。ただただ二人は驚いた。長浦がこんな苦しそうに言葉を連ねていることさえ、ついぞなかったことだった。
天野が続けた。
「私達、楽しそうな二人が、羨ましくて、でも怖くて、突き放そうとしてたんだ。それをたしなめられて、私達は謝ろうとしてた。でも態度にも言葉にもな
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