第一部
第二章
さよならの序奏
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彼女はそっとロケットを着けた。それは彼女の胸元で金色にきらきらと輝いた。とてもよく似合っていて、祐二はほっとした。女性にアクセサリーを買うのは初めてだった。
「似合う?」
「うん。とってもよく似合うよ。きらきら光って…」
祐二はしばらく見とれていた。真里も嬉しそうに微笑んだ。河が流れるさらさらという音が、二人の耳に、話しかけるように聞こえてきた。
「雪降らないね。」
照れ隠しもかねて、祐二はつぶやいた。
「そうだね。」
真里が応じる。二人とも雪が好きだった。ずっと降らないか、と楽しみにしていて、もう二月十四日になってしまった。気温は十分低いのだが、雨雲がないらしい。
「降るといいよね。」
祐二は、真里と雪を見るのが夢だった。白銀の世界を二人で歩きたい、と。
「無理かもしれないね。」
真里が切なげに言った。なにか変だ、と祐二は感じた。
「そんな悲しいこと言うなよ。」
「だって…」
「だって、なに?」
「だって、悲しすぎるから…祐二、ごめん。またあとでね。あとでちゃんと話すから。」
そう言うと、真里は慌てたように河川敷の坂を登っていった。その背中を見送って、祐二は大惨事を予感した。浮気疑惑のときとは比にもならない、不安と焦燥を真里から感じた。
祐二はそっと、チョコレートを口へと運んだ。ほろ苦い感じがした。
抱え込むなよ、と祐二は小声で言った。それは白くなって、冬の空に消えていった。
一週間後、事件は起きた。
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