第一部
第二章
クリスマス
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クリスマスになった。
恋人達の愛の一日。それが、クリスマスだ。
祐二と真里は、イブの晩、ちょっと背伸びをしてクルーズを楽しんだ。船は草原公園の近くの港を出て、お台場を周遊、レインボーブリッジを経由して都市の遠景を眺めながら夕食ということになっていた。
祐二は港の端っこで、湖面に映るクリスマスの町並みを見ていた。色とりどりのライトが照らされ、サンタとトナカイが町中に飾られている。子供のころ、そう、まだサンタを信じているくらい純粋だったころ、クリスマスを魔法みたいと思うことがあった。たった二日間だけれど、町中が賑わい、人々は笑顔で話し、町中が絵本の中のように楽しく装飾される。おまけに長い長い夜を越えて、朝はプレゼントだ。そう思っても不思議はない。
クリスマスを終えれば冬休み。受験生になる前に、と真里とはいろいろな計画があった。カウントダウンパーティーに出向き、初日の出を見、降雪を見に旅行に行き…祐二は、これから数週間の冬休み中、魔法は解けてしまわないと確信があった。
「祐二ー。」
真里の声がする。赤いダウンコートを着て、真里が走ってくるのが見える。
「真里。」
呼びかけに応じる。
「お待たせ。」
祐二は真里に負けじと早めに来るよう努力していたので、この日も真里に勝つことができた。変な対抗心だったけれど、なぜか祐二には重要なことのように感じられた。
「行こうか。短い遊覧だけど、楽しんでね。」
祐二が言うと、彼女が頷く。当たり前のようなやりとりだけれど、愛に満ちていた。
二人が乗ると、船はすぐに出発した。お酒がない船で未成年も乗れるので、船内はほとんど中高生カップルや子供が乗客となっていた。飲酒規制を逆手に取って、若年層に定評を誇る船だった。
「祐二。今、幸せ?」
真里が尋ねる。
「幸せだよ。」
祐二は笑って答える。船はどんどん進んでいく。
「よかった。私、悪い恋人じゃなくて。」
真里が小さく笑って頷く。
「悪い恋人なわけないさ。真里といる限り、僕はずっと幸せだよ。」
「うん。ありがとう―」
祐二は真里の小さな肩を、優しく抱きしめた。真里も応じるように祐二に身を寄せる。
二人はしばらくそうしていた。クリスマスの灯火が、船の進行に応じて流れるように過ぎ去っていく…
美しかった。眼前の魔法は、平和がくれた贈り物だった。いろいろあるけれど、やっぱり今、幸せだ。
「あ、橋だ。橋。」
一人の少年が、歓声をあげるのが聞こえた。
何だろうと二人もそちらを向くと、そこにはレインボーブリッジがあった。クリスマスイルミネーションで虹色に輝いている。
「本当に七色に輝くんだ。すごいね。」
祐二も感心する。お台場の街の中でも他の光に負けずに輝いている。イブの晩に輝くそれは、海を、街を、そして心を、七色に染め上げてい
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