第一部
第二章
夏休み
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予定を明け、いろいろな口実を考えた。
何週間も前から、ずっと―
「十四歳おめでとう。真里。」
祐二は真里のように微笑んで、静かに言った。からかいも、謝罪の意志もなにもない、ただ純粋な祝福の言葉だった。
「え…だって…ねぇ…祐二…彩…直哉…」
真里の震えは止まらなかった。祐二は静かに打ち明けた。
「真里の誕生日を冨原から聞いてさ、この計画を立てたんだ。いつもの笑顔のお返しに、めちゃくちゃ驚かせて、喜ばせてあげたいって。でも、結果的に真里を傷付けることになっちゃって。ごめんね。もう一度言わせて。ずっと言いたかったんだ。誕生日おめでとう!」
言い終えるやいなや、真里は泣き出してしまった。
「祐二…うっ…うっ…ありがとう。みんな。ごめんね。怒ったりして…私…うっ…私、バカだよね。ありがとう…」
直哉と彩が、躊躇いがちに微笑むのがわかった。
「でも、なにか言ってくれれば良かったのに…」
「私の口の堅さは、真里のお墨付きだからね。」
彩が楽しげに言うと、真里は居心地悪そうに微笑んだ。
「冨原、俺、浜に忘れ物しちゃってよ。一緒に来てくんないか。」
「わかったわよ。淑女の涙には、愛の手が必要ね。」
「門外漢は、何も言うな。」
二人は店を出て行った。ありがとう、と祐二は心で言った。
二人きりになった。祐二はそっと髪を撫でると、今度こそ真里の手を握りしめた。
「真里。落ち着いた?」
息切れしているけれど、涙は止まったみたいだった。
「うん…ありがとう。祐二。すっかり飽きちゃったのかと思って、私…」
「飽きたりするわけないじゃないか。実を言うとさ、会うたびに、どんどん好きになってくんだ。大好きなんだよ。真里。」
「祐二…」
「それに、ちょっと嬉しいかな。」
祐二はちょっと悪戯っぽく言った。真里が首をかしげている。
「友達に嫉妬するくらい、僕を想ってくれてたんでしょ?」
突然、真里が真っ赤になった。耳の先まで、絵の具で塗ったのかと思うくらいに。
「はっ。恥ずかしいよ…」
「そうじゃなかった?」
追い詰められて、真里は俯いた。意地悪しすぎたかな、と祐二が言葉を探したときだった。
「そんなの…決まってるじゃない。好きだよ。祐二のこと…すっごく…」
「ありがとう。」
二人は固く手を握り合った。と、その時だった。
ドーン
お腹の中まで響いてくる、懐かしい音が聞こえた。窓を見ると、真っ赤な花火が打ち上がっていた。浜を見下ろすと、いくつか屋台が並んでいる。
「花火…?」
「奇しくも、花火大会のようだね。」
「これも?」
「もう、そういうのなしにしようよ。せっかくの夏祭りなんだからさ。」
祐二は笑って、真里の手を握りしめた。
ケーキを食べ終えて店を出ると、携帯が震えた。直哉からだった。
『勝手に遊んで
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