第一部
第二章
夏休み
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と叫んだ。その姿に微笑んでいると、二人の反撃を真っ正面から受けて、祐二と直哉は死にかけた。
遊びが終わるころになると、もうすっかり身体が重かった。
特にビーチバレーでは、祐二と真里、直哉と彩に分かれて勝負したため、非常に大変だった。最初は良かった。祐二は、真里の前では格好良く、と必死で戦っていたため、優位に立っていた。しかし次第に彩の機嫌が損なわれ、最終的に直哉が恐喝されるはめになった。直哉の命がけの抗戦もあって、結局引き分けで終わってしまった。祐二は、真里にいいところを見せられず、少し物足りない気分がした。
日が傾き初めて、四人はパラソルに戻った。疲れた人が定期的に戻っていたため、パラソルの下に準備しておいた飲食物もいつの間にか底をついていた。
「あんたが食べたんでしょ。」
と彩が鋭く直哉を睨むと、直哉は、
「誰かが運動させてくれたんでね。」
と応じた。こんなやりとりがずっと繰り返されていて、むしろ祐二には二人がカップルのようにさえ見え始めていた。
一方、祐二は自分の伴侶に、少し違和感を抱き始めていた。何となく自分とふれ合うのを躊躇しているような、そんな感じがした。しかしその違和感はかなり漠然としていたので、真意を確かめることもできなかった。
大丈夫、今夜は、そんなことはどうでもよくなるだろう
祐二は思った。
真里がトイレに行ったのを見計らってから、祐二は彩に尋ねた。
「例の件は、大丈夫だね?」
小声で耳打ちしたら、彩は頷いた。
「万事OKだよ。」
満足げだった。祐二はほっと安心して、心地よい疲労感に身を任せた。太陽がいつの間にか水平線にくっついていた。まもなく一日が終わる。
楽しかった。
これから大事を為そうというのに、祐二はすっかり一日を回想して、夕日に魅入っていた。紺碧の空と薄青い海を、夕日は一気に茜色に染め上げてしまう。不思議だった。
「ただいま。」
真里の静かな声がした。すっかり疲れてしまっているのか、小さな声だった。
「おかえり。見て。きれいだよね。」
祐二は夕日を指さした。真里がじっと夕日を見つめた。漆黒の瞳が、温かな赤色に変わった。蛍の祭典の時のように、自然と手が繋がっていった。一日海で遊んでいたのに、その手のひらはとても温かかった。
「きれい。本当に。」
真里はつぶやくように言った。
四人は、しばらくの間、水平線に沈む陽に魅入っていた。楽しい一日が終わってしまうというのに、ちっとも寂しくなかった。大好きな人と見る夕日って、こんなにきれいなんだ、と祐二の心は揺れた。
真里も同じく、夕日に心を奪われていた。
しかし、彼女の胸の内では、駅で集まった時はとりとめもないほどのものだった不快感が、少しずつその大きさを増していた。自分の愛が増していくにつれ、話題こそ知らないもの
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