第一部
第二章
夏休み
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そうになって、急いで口を塞いだ。直哉と話すときは、本当に油断できない。
「なぁ、それで、どこまでいったんだよ。」
直哉の声が、突然ひそひそ声に変わった。ろくでもない話題だと祐二は察した。
「どこまで?」
直哉の真意を探る。いったい、どんな意図で聞いているんだろう。
「だから、手は繋いだか?」
「おう。それくらいはな。」
「噂でもあったしな。じゃあ、キスは?」
「…」
祐二は頬がかあっと熱くなるのを感じた。七夕の日の、柔らかい唇の感触が思い出される。
「なかなか進んでんじゃん。その先は?」
ハイテンションになった直哉が、さらに尋ねた。ウキウキとした、高らかな声だった。
「その先?」
鈍感な祐二は首をかしげた。
「だ・か・ら…夜、二人っきりになってさ…活気盛んな十四才。ねえ?」
ようやく察しが付いた祐二は、しばしのあいだ黙り込んだ。ちょっと官能的な妄想が行われた。直哉の言う通りで、彼も思春期の入り口だ。若気の機微を、直哉の言葉は少なからず刺激した。
「ねえ。まあとにかく、責任と秩序ある交際をね。うん。ふふふ…それと、色気もね。」
祐二は、妄想を停止し、拳を振り上げることにした。
海に出ると、まだ二人は来ていなかった。借りておいたパラソルを設置して、二人の帰還を待った。直哉は拳が効いたのか、もう尋問はしてこなかった。海の風が二人の頬を打った。青い世界が、静かに揺れていた。平和な時間だった。
「お待たせー。」
彩の声がした。真里を伴って、海の家から二人が来ていた。祐二はドキッとした。
「なに?」
じっと見つめていると、真里が首をかしげた。
すごく、きれいだった。オシャレな水着を纏うその少女に、祐二は魅入った。先ほど話をしたせいもあって、青空と彼女の境に生まれる優美な曲線は、祐二の目を離さずにはいなかった。祐二は、胸の奥がかあっと熱くなるのを感じた。
「どうしたの。」
「い、いや…その…き、きれいだね。」
真里の詰問を前に、祐二は思わず本音を言ってしまった。恥ずかしくなって、真里から目をそらした。予想通り、直哉が面白そうにこちらを見ていた。
「あ、ありがとう。って、ちょっと恥ずかしいよ。」
真里は恥ずかしそうに俯いた。何十人もの女性がこのビーチにいたが、自分には真里しかいない、と祐二はこのとき思った。こんな互いに素直になれて、互いを受け止め合える人は、他に無いだろうと思った。
「真里の代弁をするよ。エッチ!変態!」
彩が言い罵った。祐二は目が覚めたようになって、ごめん、と真里に手を合わせた。
「めんどくせえよ。行くぞ。」
直哉が立ち上がって、先に海へと歩いた。祐二はその背中に、心から感謝した。
四人はビーチボールや砂遊び、泳ぎ競争などをして楽しんだ。水を掛け合ったりするたび、真里と彩はきゃあきゃあ
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