第一部
第二章
夏休み
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いいから…」
そう言うと、ほっ、と真里が息をつくのが聞こえた。
「ありがと。大好きだよ。祐二。」
そう言われるやいなや、祐二の胸はこれまでにないくらいに温かくなった。これが、恋―今まで経験しえなかった、凄く心地よい温もり。胸がきゅうっとなるくらい、真里が大切な存在に思える。
「ぼ、僕も好きだよ。じゃ、じゃなくて…大好き、だよ。それじゃ、おやすみ。真里…」
「おやすみ。祐二。」
電話を切った。ほっとしたような、名残惜しいような、そんな気持ちだった。
部屋の窓から、夏の夜空が見えた。十七日にも、あんな夜空が見えたらいい。
彩や直哉と、前々から計画してきた。あとは、当日晴れてくれるのを、祈るのみだった。週間天気予報は、曇りのち晴れ。
真里はというと、やはり祐二と同じように携帯を握りしめて、十七日のこと思っていた。真里にとっては、特別な日だった。
そういえば、祐二は知らないんだった。
ううん。いいの。むしろ、祐二と過ごすほうが、楽しいもん。
本当は、二人で過ごしたかったのに。どうしてわかってくれないんだろう。
オシャレな水着買わなきゃな…そうだ。男の子ってそういうのに弱いんだよね。
でも見透かされてたらどうしよう。その前にお金を…
天気は大丈夫かな…
真里は週間天気予報を見た。曇りのち晴れ。
大丈夫。なにがどうなっても、祐二はなんとかしてくれる。だって、祐二は天野や長浦にだって、抗戦してくれたんだもの。真里は、そう信じることに決めた。
いよいよ十七日になった。
じりじりと暑い陽を浴びて、祐二は駅の西口にいた。午前中は曇っているはずなのに、見えるのはビル群の間から顔を出した、小さな入道雲の頂だけだった。夏の風が微かに吹いた。時刻は、九時八分前。蛍の祭典のときは真里を待たせてしまったので、今回は何が何でも自分が先に、と、早めに待ち合わせ場所にきた。
「井原〜」
呼び声がした。ほのかな期待を胸に振り向くと、彩だった。祐二は溜息をついた。がっかりしなかったと言ったら、嘘になるだろう。
「なによ。会った瞬間に溜息つかなくたっていいじゃない。愛しの人じゃないからって。」
彩が憤慨した。
「ご、ごめん。って、愛しの、って…」
言われた言葉に戸惑った。噂はあったものの、恋人同士であることは、彼女は知らないはずだ。
「ちゃーんと知ってるんだから。まぁ、真里に吐かせたんだけど。」
「真里に?」
「お、早くも名前で。こりゃアツアツだね。」
「う、うるさいなあ。」
口を尖らせていると、彩が突然耳元にささやいてきた。
「例の件は、大丈夫です。」
「了解。」
二人は軽くウインクした。万事満タンのようだ。祐二と彩には、ある計画があった。
「ゆ、祐二?」
真里の声がした。祐二
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