第一部
第一章
告白
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ことが同じというのは、やはり日本人だなと思った。同じ人間だ。同じ事を思う。同じように生きる。なのに、どうしてこんなに、違ってしまうんだろう。
「そうだね。願いごと、あるの?」
祐二は、そっと彼女を見つめた。彼女の瞳にもまた、満天の星空が映っていた。
彼女はしばらく考えたようにすると、
「そういうのは、聞く方が先に言うものだよ。」
と応じた。結構興味があったので、ちょっとがっくりした。というのも、祐二が彼女に願い事を教えるのは、至難の業だったからだ。
「うーん…」
考えるそぶりを見せて、祐二は悩んだ。想いを伝える、またとないチャンスだった。修学旅行のとき言えなかったことを、今こそ伝えられるかもしれない。今しか、チャンスはないかもしれない。おそらく唯一にして、最高のチャンスだろう。
だが、やはり祐二は、修学旅行で感じたのと同じリスクを胸中で恐れていた。フラれて彼女を失うことは、祐二には耐えられないことだった。
この数ヶ月間、ずっと彼女の気持ちを詮索してきたが、答はわからなかった。ずっとわからないだろう。尋ねるほかは。
でも…もし願い事が叶ったら?
祐二はそれを考えると、もう自分の内に気持ちを抑えておくことはできないと思った。ずっとずっと、真里と一緒にいたい。真里の気持ちが知りたい。
そしていつしか、祐二は、こう言っていた。彼女の瞳を、まっすぐ見つめながら―
「願い事が…叶うなら、僕は、君とずっと一緒にいたい。」
高揚も、躊躇も、歓喜も、恐怖も、何もなかった。想いを伝えること、それだけが、頭の中にあった。
彼女が目を見開いてこちらを見て返事をするまで。その時間は何時間も、いや、何年もあったように思われた。だが、祐二はもう落ち着いていた。まっすぐ彼女を見て、答を待つ、それだけのことができるだけ、祐二は成長していた。
ようやく彼女は、口を開いた。
「ありがとう、祐二…私も同じだよ。」
祐二の心は、無から、果てのない喜びへと変わった。
「ああよかった。真里、僕、とても嬉しいよ。」
そうして星空の下、若き男女は、そっと唇を重ね合わせた。
遙か彼方の天空で、おり姫とひこ星が織りなす恋。二人の恋は、それさえもしのぐものだった。何千年という月日を経ても、変わらないものがここにはあった。
星が、風が、大地が、河面が、あらゆる自然が、二人の恋の誓いを、優しく見守っていた。
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