暁 〜小説投稿サイト〜
虹との約束
第一部
第一章
初デート
[1/5]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 体育祭も、中間考査も終わり、六月も終盤を迎えた。
 初デート、読者のみなさんはいつだろうか?
 デートの定義を、男女が共に、二人きりで時を過ごすことと定義するなら、二人の初デートは、六月下旬だったと言える。 
 祐二が家に帰ると、叔父が家に来ていた。そういえば、と思う。叔父は郊外区に住む若々しい男性で、もの静かだが思いやりのある男だった。一年に一度は祐二の家を訪れて、様子を見に来ていた。
「お帰り。祐二君。おじゃましています。」
叔父に頭を下げられて、祐二も慌ててお辞儀をした。年上の人物にこうした態度をされると、逆に困ってしまった。店の店員さんとは違って知人であるから、余計そうだ。
「あ、どうも。え、えっとーいらしてたんですか。」
「まあ。ですが、もう帰るところです。あ、そうそう。」
突然、叔父が、何かを思い出したように鞄を探った。そしてようやく一つのクリアファイルを取り出し、祐二に差し出した。
「これ、ウチの近くの草原公園で開かれます。よろしければいらしてください。」
クリアファイルを受け取って見ると、それは何やらイベントの案内だった。
「蛍の祭典?」
来週の日曜日、蛍の鑑賞イベントが開かれるというのだ。家からそう遠くないので、行ってみようかと思った。でも、入場料がかかるようだった。
「さすが祐二君。鋭いところに目がつきますね。」
祐二が料金のところを見ているのを見て、叔父は微笑んだ。祐二はなんだか照れくさくなって、そこから目をそらした。
「大丈夫。招待券を二枚お持ちしました。どなたか誘ってみてください。」
祐二は叔父から招待券を受け取った。小さなチケットが二枚。
「それでは失礼します。」
祐二が考え込むのを見て、叔父が玄関へ進む。
「あ、ありがとうございます。またいらしてください。」
慌てて返事をして、祐二は自分の部屋に駆け込んだ。

 誰を誘おうかな…
 夏の匂いのする学校で、祐二は悩んでいた。第一候補は親友である直哉だった。第二候補は学級委員の一樹。小学校から一緒なので、誘いやすいといえば誘いやすい。だが優等生は部活も忙しいものに入っているので、来てくれる見込みは少ない。
 やっぱり直哉にしよう、と祐二は席を立った。その時、廊下で話している真里が目に入った。祐二は目を見開いた。第一候補が入れ替わった。だが、永遠に遠く感じられる第一候補だった。何を考えているのだ、と思った。女の子をこういうのに誘うのは、もっと親密な関係なときだけだ。
「直哉ー。」
祐二は直哉を呼んだ。
 だが、金曜日になって、直哉は突然約束を断ってきた。
「ごめん。親戚の法事が入っちゃって。」
何を!と思った。数ヶ月間この男と過ごしてきたが、こんなことは初めてだった。
「珍しいな。なんかあったのかよ?」
怒りと言うより驚き
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ