第一部
第一章
体育祭
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
でも彼女と一緒にいたいと思う。愛し合いたいと思う。他の女子とは違って、彼女が特別な存在に見える。彼女と話すだけで、なんだか衝動に駆られるような、幸せな気持ちにもなれる。
これが、恋なのか?
祐二は、今ひとつ自分の気持ちを整理することができなかった。
いよいよ、体育祭の日が訪れた。
校長の話も、開会宣言も終わり、あっという間に競技が始まった。
その日は曇りだった。天気予報は、曇り後雨。あまり適した天候ではなかったが、雨は夜からと報道されており、体育祭には影響がないとされた。
リレーが始まった。祐二の組は順調に勝ち進んでおり、二位まで昇進していた。一位である黄組を追い越そうと、応援団も鼓舞激励していた。
祐二に番が回ってきた。速度を速めながら走っていく。バトンが右手に触れた瞬間、全速力を出せるように待機していた。
まだか まだか
バトンが来ない。何を手こずっているのだろう。このままではラインを越えてしまう。
来ない 来ない
なぜだ。だが振り返ったらその分速度が落ちてしまう。
来いよ
黄組がバトン受け渡しを終え、走り抜けていく。
来いよ!
その時、やっと、バトンの感触が手に伝わってきた。間隙もなく、祐二は全速力で走り抜けた。力を振り絞って大地を駆けた。相手は黄組。真里の組だ。
だが、祐二は決意をしていた。その決意が、祐二の走力を二倍にも三倍にも高めた。
もう少しだ―
もう三十メートルほどだった。すぐ横に黄組選手がいる。
祐二は前を見た。黄組選手ではなく、眼前のゴールを見た。人は目先の物事ではなく、終着点を目指さなければ、勝利など手にはできないからだ。
その時だった。黄組選手の視線を、祐二は背後に感じた。
行ける!
祐二は風の如く走った。自信があった。勝てる。またそれは、油断へと繋がらない自信だった。
勝てる 勝てる 勝てる
祐二は頭の中で繰り返した。
とたん、黄組選手が視界から消えた。応援団の歓声が聞こえる。
勝った!
祐二は雄叫びをあげた。もっともそれは本当にあげていたのか、心の中であげただけなのかはわからない。だが、確実なこと。それは、祐二が、黄組の彼に、心で勝ったことだった。
次の走者にバトンを渡した。係に誘導されながら、得点ボードを見る。赤組と黄組は同点だ。そして走者を見る。どんどん黄組との距離が開いていく。
赤組は、最有力優勝候補となった。それは祐二の、揺るがぬ決意が生んだものだった。
赤組は他の組をどんどん抜かしていき、閉会式直前には最下位の組と百点差を生むに至った。祭典というのは夢の如くあっという間に終わってしまうもので、あれよあれよと閉会式になった。
無事赤組は優勝を収めた。応援団長が胴上げされ、宴のような解散会が行わ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ