第一部
第一章
出会い
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て。」
真里は微笑んだ。
その時だった。道の向かい側に、同じ中学の生徒が歩いているのが見えた。
真里の微笑みと、その生徒の視線から、急に祐二は気恥ずかしくなった。
見ると、真里の右半身がまだ雨にかかっていた。小さな折りたたみ傘では二人分のスペースを守れなかったのだ。だから真里は、気づかれないように、祐二の方に傘を……
ど、どうしろってんだよ…
祐二は乾いていく自分の左半身を、黙って見ていることができなかった。
「や、やっぱりいいよ。走っていく。傘…明日でいいから…それじゃな!」
いつのまにかまた元の口調に戻ってしまっていた。だが、おかげで祐二は吹っ切れた。大きく手を振ると、祐二は思い切り走り出した。男女意識の苦痛に苛まれるよりは、雨の中を走る方がよっぽど楽だった。後ろの方で彼女が呼ぶ気配がしたが、本当に呼んだのか、空耳なのかはわからなかった。
無我夢中で走り、角をいくつも曲がった。そして裏道に出ると、祐二はやっと止まって息を整えた。気が落ち着いてくると、頭の中に、一連の出来事が蘇った。
「ああー。バカバカバカ。」
祐二は自分の頭を叩いた。恥ずかしさ、その一言に尽きた。
ふと、水たまりに映る自分の顔を見つめる。笑っている。
何で笑ってんだよ。
祐二は固まった。彼女と話しているときは、どんな表情をしていたんだろう。そういえば、彼女、戸惑っていたような様子だったな…
「ああー。バカバカバカ。」
祐二は雨に濡れた髪をかきむしった。
これが、真里との出会いだった。
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