反董卓の章
第16話 「大丈夫――行ってくるよ」
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」
「え? あ、は、はい! 先程、伝令で救援要請がきました。左翼に展開している鈴々ちゃんに向かってもらいましたが――」
「ならこちらもすぐに動こう。俺と馬正が前に出る。右翼の愛紗には予定通り曹操軍と連携して、袁術軍を引っ掻き回している騎馬隊――おそらくは霞を止めるように指示してくれ」
「ぎょ、御意です!」
豹変――まさしくそう呼べる主の言動と雰囲気。
それに戸惑いつつも、伝令兵を呼びつける孔明。
(い、今のは何だったんだろう……まるで盾二様が何かに乗り移られたような……まるで別人だった)
自分が敵わないと思わせられるほどの知識と知謀、そして徳を持つと敬愛する主。
その主が、今まで見たことのないような豹変した感情を覗かせた。
あの時感じた威圧感、そしてその言動は、孔明にして心胆寒からしめるものだった。
(あれ、あれではまるで……まるで……)
その事に首を振りつつ、孔明は首だけ動かして背後で劉備と話す主を見る。
その表情となくなった威圧感にほっとしつつも、一抹の不安が心に棘を穿つ。
(――き、きのせいだよ、気のせい……そうだよね、雛里ちゃん……)
今は別の作戦のために離れている鳳統に、まるで祈るように心で問いかけた孔明。
だが、すでに心に突き刺さった棘は――じわりとその毒を広げていたのだった。
―― 劉備 side ――
「ご、ご主人様……本当に、大丈夫?」
「ん? ああ……どうしたんだ、桃香?」
ご主人様がきょとんとした顔でこちらを覗きこんでくる。
その眼はいつもの優しいご主人様。
よかった……でも、さっきのは一体……
「よくわかんないけど、俺はそろそろ前に出ないと。雪蓮が大変だろうしな。本陣の直営部隊は桃香と朱里にまかせたよ」
そう言って歩み去ろうとするご主人様。
その姿に思わず――
「ご主人様!」
――声をかけてしまった。
そして振り向くご主人様。
「大丈夫――行ってくるよ」
その優しい笑顔と共に発せられた言葉に、胸がズキンと痛む。
――行かせてはいけないのかもしれない。
何故か、そんな直感めいた思考が頭によぎる。
でも、それを口に出すまもなく――
ご主人様は、前線へと駆け出していった。
「ご主人、さま……」
その姿が兵の中に埋もれて見えなくなる。
そのことに言い知れぬ不安が、私の胸を締め付けた。
「主! 主はおりませぬか!」
不意に声がする。
見れば馬に乗った馬正さんが、こちらへと向かってきていた。
「玄徳殿。主はいずこに?」
「あ――い、今、前線に出ると」
「む。いかん、すれ違
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