反董卓の章
第16話 「大丈夫――行ってくるよ」
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大門が行く手を遮るように鎮座している。
その周囲の大地は、この地に関が作られてより数百年、秦の時代より幾多の戦いが繰り広げられてきた場所でもある
防衛の要所、虎牢関――幾多の血と肉と怨念が渦巻くこの場所は、それゆえに渇いた大地となって草一つ生えることのない不毛の地でもあった。
「……戦闘の状況は?」
そんな中、自身の服や腰の短刀を確認する確認した男が憂いた顔で劉備の前に立つ。
その男こそ、劉備軍の要、軍師にして戦士である男――北郷盾二だった。
「ごしゅじん――」
劉備は彼に振り返った後、思わず口をつぐむ。
その表情には、いつもの敬愛する優しい男の表情ではなかった。
「……朱里」
「っ! は、はい! 孫策軍は敵の攻撃をいなし、後退しながらも何とか受け止めています! ですが、袁術軍の方は数万の騎馬隊に蹂躙される形で今にも敗走しそうな勢いです!」
背筋が凍るような声を聞いた孔明が、上擦りながらも状況を報告する。
普段、自身の仕える主と慕う盾二であるが、先程からの威圧感とも言えるような雰囲気に、思わず脂汗がにじむ。
(はわわ……い、いつもの盾二様じゃない。こ、こんな盾二様を見るのは初めて……)
水関で指揮を執っていた盾二とは、何かが違う。
少なくとも、これほどの威圧感をもって自分に接する姿は初めてだった。
「ご、ご主人様……ど、どうしたの? なんか、こわいよ……?」
「ん? そうか……? 柄にもなく緊張しているのかな……」
そう言って精悍な顔が笑う。
それはいつもの人懐っこい笑顔ではない。
まるで虎が笑う……獰猛な笑みだった。
「………………」
本陣に残った劉備と諸葛孔明が、敬愛するその人の豹変に息を呑む。
まるで別人――そう思わせるような変わり様だった。
「何故だろうな……何故か心が踊るんだ。まるで昔に戻ったような……」
「……昔?」
「ああ。俺が戦場にいた頃……血と、汗と、硝煙の中のいた頃の。『唯一人』で戦っていた、あの頃の――」
そう呟きながらも獰猛な笑みを浮かべる姿は、すでに天の御遣いとは呼べない姿だった。
まるで悪鬼――邪気が乗り移ったような姿に、周囲の兵からも悲鳴のような声がする。
「…………ごしゅ、ご主人様?」
「……? いや、一人? ちがう、俺は……一刀が……二人で戦って……」
不意にその獰猛な笑みと気圧されるような威圧感が薄れる。
その表情は戸惑いながらも、劉備たちが見知ったものだった。
「……あれ? 俺、何考えて――ああ、そうだった!」
ガリガリと頭を掻く盾二。
そして劉備と孔明へと振り返る。
「えっと、雪蓮は五千で耐えているんだよな? 救援要請は?
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