反董卓の章
第16話 「大丈夫――行ってくるよ」
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―― 張遼 side 虎牢関 ――
――話は少し遡る。
「……敵が、くる」
「……そかぁ。やっとか」
うちは虎牢関の城門の上から水関へと続く荒野を見て、恋に答える。
その眼下には、虎牢関に残った董卓軍の全軍である十万の大軍が陣取っていた。
「思ったよりかは遅かったな。あの勢いで水関を抜けるのに数日かかったとも思えへんし……なんぞ策でも拵えたんやろか」
「……くる」
「ん……そやな。考えたってしゃあないな。もうこうなったらぶつかるだけや」
ふっ、と自重して城門の塁に足を掛ける・
「おまえらぁ! もうすぐ敵が来るで! 準備しいや!」
「「「 オオオオッ! 」」」
眼下に広がる十万の大軍勢が声を張り上げる。
それは連鎖的に広がり、大音響となった。
これで恐らくは敵の偵察にはバレたやろな。
「せやけど、この一戦……士気がなければウチラの負けや。どうあっても勝たなきゃあかんねん」
そう。
水関を撤退したウチは、虎牢関にいた賈駆っちに連合軍の戦力を報告した。
その上で、その常軌を逸した関落としの方法を伝えると、賈駆っちはすぐに月の洛陽脱出を決めた。
月はそれに反対するだろうと思うが……それは月に恨まれても自分がすると言った。
そしてウチらには……少しでも月が逃げる時間を稼ぐために、そしてその道中を少しでも安全にするために、虎牢関での決戦をして武威を天下に知らしめることになったんや。
その為に賈駆っちは、洛陽での守備部隊一万と北と南の関から二万ずつを後詰として動員させた。
月は西の関の一万と共に涼州へ逃すことにしたらしい。
つまりは北と南の防衛の将と兵は捨て駒にする、そう決めた。
賈駆っちは、そこまで腹を決めて洛陽へと戻っていった。
相手もおよそ十万。
後詰の五万はどうやっても数日の遅れが出ると思っとった。
だが、何故か連合軍は……予想よりも三日遅れて虎牢関へと来た。
その御蔭で後詰が間に合ったのやが……
おそらくそれは……
「……霞。だいじょぶ?」
「……ああ。ウチはもう負けられへんねん。盾二にも……自分にもな」
「……?」
「今は正直、悔いとんねん……殴って気絶させてでも華雄を下がらせるべきやったと。それがウチの役目やったんやと、な。けど、華雄は三日もの時間を稼いでくれた……恐らくは命を捨ててな。今では感謝しとる……だからこそ、ウチは自分を許せへんねん。あの時、盾二に恐怖してしまった自分にな」
そうや……あれは恐怖や。
盾二の知を知っとったうちが、その武まで知った時、うちの心に芽生えたのはそれに相対する恐怖やった。
戦う前から負けとった……華
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