偽り姿を変える者
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線を元に戻し、小さく呟いた。
「ヴィーテルシア」
その小さい呟きに、クロス達の声が止まる。
「ヴィー・・・何だって?」
「ヴィーテルシアよ。知らないの?」
「知らねぇよ」
「魔法学の第一人者だっけ?確かフルネームはヴィーテルシア・ベルザンディ」
長い名前にナツが首を傾げ、魔法学に詳しいサルディアが思い出すように呟く。
「これでいいの?」
ナツ達から目を外し、狼へと目を向けるティア。
そして、目を少し見開く。
「・・・何故、お前がその名を・・・」
狼は、震えていた。
驚愕に目を見開いて表情を染め、声も震わせる。
「何故、って・・・昔・・・確か3歳くらいの時実家に来たネコに付けた名前だけど」
「ネコ?ネコなんて来た事あったか?」
「クロスは知らなくて当然よ。私の部屋に来て、すぐにいなくなったし」
「つかお前は何で3歳で魔法学の第一人者の名前知ってんだよ!?」
御尤もなツッコミをグレイがいれる。
「ネコ・・・?・・・まさか!」
しばらく何かを考えていた狼は、少しして尻尾をピンと立てる。
そして、恐る恐るといった様子で尋ねた。
「お前があったというそのネコ・・・もしかして、濃いグレーの毛にアイスブルーの目じゃなかったか?」
「・・・何でアンタがそれを知ってるの?」
ティアが眉を顰める。
狼は震え、「そうか・・・」と小さく声を零した。
「『似ている』のではない・・・お前が・・・あの時の、少女か」
紫の目が潤み、微笑む。
「アンタがあのネコ?ヴィーテルシア?」
「・・・ああ。かつてはそう呼ばれた。本当に短い間だったがな」
そう言い、1歩近づく。
そして、スンと鼻を鳴らした。
「変わらんな・・・この匂いは。あの時と同じだ」
「・・・もっとマシな確認法、無いの?」
「生憎、容姿は忘れ、名前は聞いてすらいなかったからな」
尻尾をふわふわと揺らし、嬉しそうにティアの脚に頬を摺り寄せる。
一瞬戸惑うような表情を見せたティアだが、その頭にゆっくりと手を伸ばし、撫でた。
「んじゃ、お前もギルドの仲間だな!」
明るい声でナツが言う。
「?」
「だって魔法使えるし、ティアの相棒なんだろ?」
「いや、相棒とは言ってないけど・・・」
何か勘違いしているナツにティアが言いかける。
が、ナツはそれで納得しているようだ。
「相棒・・・を、名乗ってもいいのか?」
紫の目が、じっと見つめる。
ティアは無表情で顔を逸らし、「・・・好きになさいな」と小さく呟いた。
「ならば名乗らせてもらおう。俺の名はヴィーテルシア。ティアの相棒だ」
上機嫌に尻尾を揺らし、紋章を押す為ミラについていく狼―――ヴィーテル
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