偽り姿を変える者
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、至って平和で普通な生活だった」
昔を思い出しているのか、少し遠い目をする。
「・・・が、とある仕事で俺はとんでもないヘマをしてしまったんだ」
「ヘマ?」
アルカが首を傾げる。
「失われた魔法には強烈な副作用がある。1度に使いすぎる事で起きる副作用や、とある魔法を使う事で起こる副作用・・・様々だ。そして、偽り姿を変える者にも、副作用があった」
その表情が暗くなる。
少し躊躇い、顔を上げ、ティアの青い目を暫し見つめ、口を開く。
「1度に使いすぎる事で・・・本来の姿を失ってしまうんだ」
しゅん、と狼の耳が垂れる。
ギルドメンバーが何とも言えない表情を浮かべる中、ティアは1人無表情だった。
「俺は副作用を受け、本来の姿を失い戻れなくなった。それからは時と場合に合わせて姿を変えている。基本的にはこの狼姿だがな」
紫の目にアイスブルーの毛並みの、テーブルと同じくらいの大きさの狼。
同じ寒色系だからか、ティアの横に並んでいるとしっくりくる。
「・・・で、名前がないってのはどういう事だよ?お前、人間だったんだろ?そん時の名前はあるんじゃねーのか?」
漸く話を理解したナツが首を傾げる。
「・・・捨てた」
「え?」
「人間だった時の名は、姿を失った時に捨てた。その後は名を付けられては捨て、名を付けられては捨てている。名を付けた人間が、俺を捨てたその瞬間にな」
この人間だった狼が何人の人間に捨てられたかは解らない。
が、この話をするのを極力避けようとしていた所を見ると、この話で捨てられる事が多かったのだろう。
狼が人間だった・・・そんな話をしても、信じる人間は少ないだろうから。
「だが・・・1人だけ、俺を捨てなかった女がいた」
狼の顔が、柔らかくなっていく。
「姿は消したが、直接捨てる事はしなかった。俺に名を与え、短い間だが傍にいてくれた。まぁ、それも10数年前の事だし、この姿ではなかったし、忘れているだろうがな」
薄く微笑む。
そしてティアを見つめ、紫の目を細めた。
「頼みがある」
「・・・何」
「俺に名をくれ。お前はその女に似ている。姿も名前も忘れた女だったがな」
そう言われたティアは数回瞬きし、考えるように視線を逸らす。
「名前かー。何がいいかなぁ?」
「俺はミラジェーンがいいと思うぞ」
「それじゃミラと同じだろ。それにコイツぁ『俺』っつってる。男だろーが」
「じゃあ・・・ポチ?」
「サルディア、それじゃあ犬だ」
「む・・・なら、何がいいだろうか・・・」
「お前達・・・考えるのは姉さんなんだぞ」
狼の名前を考え始めるルー達に、クロスが困ったように呟く。
ティアは視
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