偽り姿を変える者
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たナツとスバルが苛立ちを含んだ声を上げる。
「・・・貴様等に信じられる話であれば話すが、これはそうではない。現に多くの奴等が俺を疑い、捨ててきた。その経験をしているのに懲りずに話すほど、俺は愚かではない」
その言葉を聞いた瞬間、ティアの眉が動いた。
こちらも沈黙したまま狼に近づき、目線を合わせるかのようにしゃがむ。
「アンタの言う話とやらが今まで誰にも信じられなかったから何?話も聞いていない私達の反応を勝手に決めつけないで。信じるかどうかは、話を聞いてから自分で決めるわ」
淡々と、冷静で冷淡で、微量に冷酷な声が言葉を紡いでいく。
それを聞いた狼は俯き、小さく口を開いた。
「俺は、狼ではない」
「は?」
予想していなかった言葉にティアが首を傾げる。
そして狼は、ゆっくりと顔を上げた。
青い目と紫の目が合う。
「俺は・・・人間だった」
儚く、細い声が響いて消える。
「人間だった?」
「意味が解らないわ。詳しく話しなさいな」
クロスが首を傾げ、ティアが急かすように言う。
狼は「ああ」と短く返事をし、続けた。
「お前達は、偽り姿を変える者という魔法を知っているか?」
「ライアー?」
「・・・俺は魔法じゃないぞ」
スバルは横にいたライアーを見るが、ライアーは短く呟く。
「偽り姿を変える者・・・!?」
「サルディア、知っているのか?」
ヒルダの問いにサルディアは「本で読んだだけだけど」と前置きし、口を開いた。
「変身魔法に似た魔法で、実在していようがしていなかろうが変身出来るの。失われた魔法であり、太古の魔法。使える人は滅多にいないと聞くけど・・・」
「滅多にいない?失われた魔法だからか?」
「それもそうなんだけど、実在しない者に変身するにはしっかりと変身する者を想像しないといけないの。だから、使う人は並外れた想像力がないと使えなくて、ちょっとでも曖昧じゃダメなんだ」
さすがは歩く魔法辞典。
サルディアの言葉に狼は頷き、言葉を続ける。
「詳しいな、サルディア嬢。説明をしてくれた事に感謝する・・・そして俺は、その偽り姿を変える者の使い手だ」
その普通に紡がれた言葉に、全員が驚愕する。
「?」
「い、意味わかんねぇ・・・」
・・・話を理解できなかったナツとスバルを除いて。
「かつては・・・正確には10数年ほど前まで、俺は人間だった。ギルドには属さず、フリーの魔導士として故郷の人達の頼みを聞いて仕事をし、その報酬で生活をしていた。何不自由なく
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