偽り姿を変える者
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瞳が、突然の光を眩しがるように1度閉じられる。
光に慣れてきた頃に再び開かれ、テーブルに寝そべったままキョロキョロと辺りを見回し―――
「どこだ・・・ここは?」
喋った。
その場にいた全員が沈黙し、そして。
『狼が喋ったあああああああああっ!?』
「あら」
「犬って喋るの?」
「姉さん・・・これは犬じゃないと思うぞ」
殆どのメンバーが叫び、ミラが笑い、ティアが首を傾げ、クロスが困ったように笑った。
狼は辺りを見回し、近くにいたミラに声を掛ける。
「そこの銀髪女。名は知らんが教えてほしい。此処は一体何処だ?」
「ここはマグノリアの魔導士ギルド、妖精の尻尾よ」
「すげぇ・・・ミラ驚かねぇのかよ」
「ふふっ、だってハッピーもネコなのに喋るじゃない」
そういえばそうだったとメンバーが落ち着きを取り戻す。
狼は先ほどまで怪我をしていたとは思えない程に軽いステップでテーブルから降り、自分の右手を見つめた。
「ミラ嬢、といったか。もう1つ教えてほしい事がある。俺は怪我をしていたはずなのだが・・・」
「ミラでいいわ。あなたの怪我を治してくれたのは、そこにいるルーよ」
ミラがルーを指さす。
狼はてくてくとルーに向かって歩き、頭を下げた。
「助かった。礼を言う」
「ううん、気にしないで。治すのが僕の仕事だから!」
先ほどまでの疲れはどこへやら。狼が動き出して安心したのか、その疲れは見事に消えている。
いや、消えていないのかもしれないが、表情から疲れは見えなくなっていた。
「ねー、1つ聞いてもいい?」
「何だ?」
「君、誰?」
ルーの問いにその場にいた全員はズッコケかけた。
普通狼に対して「君、誰?」とは聞かないだろう。
「・・・知らん」
「え?」
狼はゆっくりと言葉を紡いだ。
「俺に名はない。そして俺には特定の姿もない。誰か、と聞かれても、答える事が出来ない」
紫の目を少し伏せ、淡々と呟く。
しばらくその姿が静寂を呼んだが、ふとハッピーが疑問を覚えた。
「ねぇ、特定の姿がないってどういう事?」
そう。
目の前にいるのは狼であり、それが変えようのない特定の姿だ。
ミラのように変身魔法を使うとしても、ミラにはミラの特定の姿がある。
「っ・・・いらん話をしたな」
狼は小さく呟き、口を閉ざす。
その表情は何かを隠しているような、何か言いたくない事があるような雰囲気を醸し出している。
目を逸らし、様々な感情を混ぜた表情の狼は沈黙した。
「だーっ!何黙ってんだよ!モヤモヤすっから早く言えって!」
「奇遇だなナツ!俺も気になって気になって仕方ねーんだよ!うがーっ!」
その沈黙に耐えきれなくなっ
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