暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
弐拾弐 弱者の戦法
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の球を捉えて快音を響かせた。正真正銘のヒットの打球が、横っ飛びした青葉の横を抜けてセンターへと転がる。

(川口さんナイス!)

二塁ランナーの中林は一気にホームを陥れようと、自慢の快足を飛ばす。しかし、ベースコーチの制止に遭って、三塁ベースを回った所で踏みとどまった。センターの剣崎から矢のような送球がホームまで帰ってきていた。これでは本塁突入は不可能だ。


(…100m11秒台の中林でも帰ってこれねぇくらい、外野が浅く守ってた。舐められてんなー。絶対外野オーバーなんて打ってこねぇってか。)


苦笑いしながら、四番打者の梅本が打席に入る。一死一、三塁。絶好の先制のチャンスである。


「梅本ォー!打てよォー!」
「武蔵野の四番の力見せてやれー!」

バックネット裏のOB達から声援が飛ぶ。

「「(せーのでハイ!)オイ!
(もーいっかい!)オイ!
(それいけぶちかませ!)ゴーゴーゴー!
打て打て打て打てうっめっもと!
かっとばっせかっとばっせうっめっもと!」」

応援席は「コンバットマーチ」に揺れ、学ラン応援団が拳を突いて気合いを入れる。



真司はこのピンチ、ボール球から入って様子を見る。梅本も慎重に球を選び、2-1のバッティングカウントが出来上がった。

「「それホームラン!ホームラン!
そーれそーれそーれそれそれ
梅本かっとばせーオー!!」」

過熱する自軍応援団のコンバットマーチに、梅本は(ホームランたぁ、そらぁご無体な…)と苦笑した。

(本来四番に座るべきは川口で、俺の打率は六番の大多和以下だってのに。身長が178あったから四番に置いとかれてるだけで……)

時田の出すサインに頷き、梅本は構える。
その構えは、スタンスが広く、ソフトボール選手のように無駄なくスイングする構え。
武蔵野打線の打者は殆どが同じ打ち方をしていた。コンパクトに、ゴロを叩く打ち方。


真司がセットポジションに入り、ゆっくりボールを持ってから、クイックモーションで投げ込む。梅本はバットを横に倒した。三塁から、中林がホームに突進する。

スクイズバント。真司の投球は低めのボール球だったが、バットが届かない所ではない。梅本が確実に一塁側に転がし、その間に中林がホームベースに滑り込む。


(……でも俺たちの野球にゃ、打順は関係ねぇかんな。)


難なく、作戦は成功する。
梅本は一塁に走りながら、笑顔を浮かべていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー



(先制された……)

真司はマウンドで汗を拭った。
武蔵野応援団が大騒ぎで校歌を歌っているのが聞こえる。古めかしく格調ある、良い校歌だ。

(データでは分かっていたけど、
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