第四章
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「これでな。いいんだ」
「そうか。じゃあいい」
リーダーは表情を消していた。その表情のない顔で頷いたのだった。
「御前が納得したのならな」
「俺のせいであいつが不幸になっちゃいけないんだ」
俺は俯いて呟いた。
「だからな。これで」
「後悔はしないよな」
「ああ、しない」
俺は仲間達に対して答えた。
「だから電車のチケットも買った。そうして」
「帰したか」
「不思議だよな」
俺は顔を上げて仲間に告げた。何か夢にまで見たこの街が全然違って見えた。
「でかくなれたのに。けれど何も掴んでいないな」
「何もか」
「ああ、まるで砂漠みたいだ」
そうだった。夢なんて掴めるものじゃなかった。それは側にあって気付くものだった。それに今気付いた。全てが遅かった、それも今わかった。
「それか蜃気楼かな」
「蜃気楼か」
「何か今はそう思えるんだ」
そう答えた。
「なくなった後でな」
「なあ」
ここで皆は俺に対して言ってきた。
「今は静かにしていろ。いいな」
「そうだよ。曲だって」
「いや」
けれどその言葉には首を横に振った。俺はあいつを失った。けれど最後の一つは失ってはいないからだ。俺はその一つに賭けるつもりだった。
「俺は・・・・・・作る」
そう仲間に告げた。
「シングルをな。だから」
「いいんだな、それで」
リードが俺に尋ねてきた。
「大丈夫なんだな」
「ああ、絶対に作る」
俺はそれに答えて言った。
「だから。任せてくれ」
「わかった。じゃあ頼むぜ」
「今度の曲な」
皆は俺の言葉を受けて声をかけてきた。
「わかった」
俺はこくりと頷いた。やっぱり俺は音楽から離れられない、それも今わかった。だからあいつにも告げた。けれど心の中の言葉は告げていない。
「愛している」
そして。
「けれどさよならだ」
この言葉だけは。俺の心の中に収めておいた。何も言いはしなかった。
I love you, SAYONARA 完
2007・5・14
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