第一章
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嬉しかった。
「それでもいいんだな?」
「いいわ」
言葉は変わらなかった。決心も。
「二人で東京に行きましょう」
「ああ、じゃあ一緒にな」
こうして俺達は東京に出た。先行きは何もわからなかったけれど俺はそれでもよかった。楽しく東京に出た。少なくともそのつもりだった。
やっぱり最初は辛かった。誰も俺達のことは知らないし収入も全然なかった。
「俺印税入ったんだけれどよ」
ギターをやっているリーダーが言ってきた。作詞はリードヴォーカルで作曲はギターのこのリーダーやサブボーカルの色の白いの、リードヴォーカルの弟のサックスとドラムがやる。俺も時々やるってパターンだった。そのリーダーが俺達に話してきたのだ。
「幾らだと思う?」
「何万ってところか?」
もう一人のサブヴォーカルの髭が尋ねてきた。
「印税っていうと」
「馬鹿言え、六〇〇円だ」
リーダーは笑ってこう言ってきた。
「それだけだよ」
「えっ、何それ」
流石に皆これには驚いた。
「全然ねえじゃねえか」
「冗談かよ」
「冗談じゃねえんだよ、これが」
リーダーは俺達に言う。
「そんなものらしいぜ、売れないバンドってのはよ」
「辛いな、おい」
「それだけだなんてな」
俺達はそれを聞いて言い合った。
「生きていけるのかね」
「ヒモやるしかねえんじゃね?やっぱ」
「ヒモか」
俺はその言葉を聞いて思うところがあった。俺はあいつと二人でボロボロのアパートを借りて住んでいた。俺の稼ぎは全然ないんであいつが水商売やって稼いでいた。似合いもしない派手な服を着て夜のネオンの街に消えていく。それを見送るのはいつも俺だった。
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