暁 〜小説投稿サイト〜
I love you, SAYONARA
第一章
[2/2]

[9] 最初 [2]次話
嬉しかった。
「それでもいいんだな?」
「いいわ」
 言葉は変わらなかった。決心も。
「二人で東京に行きましょう」
「ああ、じゃあ一緒にな」
 こうして俺達は東京に出た。先行きは何もわからなかったけれど俺はそれでもよかった。楽しく東京に出た。少なくともそのつもりだった。
 やっぱり最初は辛かった。誰も俺達のことは知らないし収入も全然なかった。
「俺印税入ったんだけれどよ」
 ギターをやっているリーダーが言ってきた。作詞はリードヴォーカルで作曲はギターのこのリーダーやサブボーカルの色の白いの、リードヴォーカルの弟のサックスとドラムがやる。俺も時々やるってパターンだった。そのリーダーが俺達に話してきたのだ。
「幾らだと思う?」
「何万ってところか?」
 もう一人のサブヴォーカルの髭が尋ねてきた。
「印税っていうと」
「馬鹿言え、六〇〇円だ」
 リーダーは笑ってこう言ってきた。
「それだけだよ」
「えっ、何それ」
 流石に皆これには驚いた。
「全然ねえじゃねえか」
「冗談かよ」
「冗談じゃねえんだよ、これが」
 リーダーは俺達に言う。
「そんなものらしいぜ、売れないバンドってのはよ」
「辛いな、おい」
「それだけだなんてな」
 俺達はそれを聞いて言い合った。
「生きていけるのかね」
「ヒモやるしかねえんじゃね?やっぱ」
「ヒモか」
 俺はその言葉を聞いて思うところがあった。俺はあいつと二人でボロボロのアパートを借りて住んでいた。俺の稼ぎは全然ないんであいつが水商売やって稼いでいた。似合いもしない派手な服を着て夜のネオンの街に消えていく。それを見送るのはいつも俺だった。

[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ