第二章
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第二章
「写真のかけらに木の実にボタンに」
「うん」
「その他にもう一つあったんだ」
「それもなんだ」
「うん。だからもう飛びたくないんだけれど」
「じゃあ君はずっとここにいるの?」
小鳥の目を見詰め返しながら尋ねた。この小鳥と話していると不思議だった。どういうわけか友達と話をしているみたいだった。僕は本当は人間でこの小鳥は小鳥なのに。
「ここに。ずっと」
「いたいけれどね」
「そうなんだ。じゃあお空にはやっぱり僕だけで」
「ううん、それでもね」
けれどここで小鳥は僕に言ってきた。
「君はお空に行きたいんだよね」
「そうだよ」
小鳥に対して正直に答えた。
「あの子がいるから」
「そう。だったら僕も一緒に行くよ」
「君も?」
「君はお空を飛ぶのははじめてだよね」
こう僕に問うてきた。
「さっきまで人間だったしやっぱり」
「そうだよ」
また正直に小鳥に対して答えた。
「飛行機に乗ったことはあるけれどね」
「だったら余計にね。一緒に行くよ」
真剣な顔で僕に言ってきた。本当に友達みたいに。
「僕も。それでいいよね」
「一緒に来てくれるっていうのなら」
僕に異存はなかった。誰かと一緒ならそれでもう寂しくはないしそれにはじめてだから。断ることなんて全く考えられなかった。
「来て。本当に」
「わかったよ。それじゃあね」
こうして僕達は二羽でお空に飛び立った。小鳥はその間ずっと僕に話しかけてきた。
「どう?お空は」
「何か不思議な感じだね」
上の青いお空と白い雲、下の緑の草原や赤い荒地を見ながら小鳥の言葉に答えた。
「まるで夢の中にいるみたいだよ」
「人は夢の中でしかお空を飛べないんだよね」
「うん、そうなんだ」
夢の中では幾らでも飛ぶことはできる。けれど起きたらそれはできないことだった。
「翼がないから」
「だから遠くにも行きにくいよね」
「すぐには行けないよ」
やっぱり翼がないからだ。これだけはどうしようもなかった。
「こんな速く動くことなんてできないから」
「それじゃあ。ある場所に行かない?」
「ある場所って?」
「君に一つ見せたい場所があるんだ」
不意にこんなことを僕に話してきたのだった。
「ちょっとね」
「見せたい場所って?」
「来てくれるかな」
小鳥は僕に答えずにまた言ってきた。
「一緒にね。いいかな」
「何かよくわからないけれど」
実際僕には小鳥が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。けれど小鳥の言葉には絶対に僕に来て欲しいという気持ちがあることがわかった。
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