第六十三話 明かされる秘密その十四
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「私が殺めてしまったあの人」
『あれは貴女が悪くはないわ』
セレネーは聡美を慰めもした、その声にあるものはあくまで優しく姉が妹に対する様な慈しみの感情もあった。
『あれはアポロンが悪いわ』
「お兄様がですね」
『全てね。貴女のせいではないわ』
「あの時、私はそれでも」
過去、無念の過去を思い出しての言葉だった。
「彼を」
『そのことは』
「月の女神はこう言われています」
『その愛は成就出来ないと』
「そう言われていますね」
『しかしそれは』
否定したかった、それでだった。
セレネーは聡美にあえて言ったのである。
『絶対ではありません』
「そのことも変えられるのですか」
『神話の頃から待っていたのです』
「お姉様の愛を実らせることをですか」
『貴女ならわかってくれますね』
聡美自身に問うた言葉だった。
『このことを』
「確かに、私もまた」
俯きそうしての言葉だった、聡美もまた神話の頃から痛いまでに経験してきたことだ。しかしそれでもだったのだ。
「ですがそれでもです」
『何故、貴女は私のことを最もわかってくれている筈なのに』
「わかっています、おそらく誰よりも」
『それでどうして神話の頃から私を止めようとするのですか?』
「間違っているからです」
聡美は俯いたままセレネーに答えた。
「だからです」
『私が間違っていると』
「誰かを犠牲にしてそれで得られても」
それでもだというのだ。
「それは本当の幸せではないですから」
『彼等は罪人です』
セレネーは聡美の言葉に返した、彼女なりの根拠で。
『それぞれ許されざる罪を犯しています、その彼等をタルタロスに送られるところ私が使っているだけではないですか』
「永遠にですか?」
聡美は顔を上げた、そのうえでセレネーの声がする方に顔を向けた。そうしての言葉だった。
「彼等を永遠に使い続けるのですか?」
『永遠ではありません』
セレネーはこのことも否定した。
『それは間も無く終わります』
「力が集まるからですか」
『その通りです、わかっているではありませんか』
「わかっているからです、私は絶対にお姉様を止めます」
『この戦いで力が集まるというのに』
「罪を全て揃えられるのですか?」
『罪を?』
「エンディミオンはそれで神になりお姉様と共にいてもどう思うでしょうか」
エンディミオンの話もした、ここで。
「お姉様が罪を犯された上でそうされても」
『彼は必ず喜んでいます』
神話から確信している、そうした言葉だった。
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