六幕 張子のトリコロジー
1幕
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マナが足りない。足りない。
ヨコセ。ヨコセ。ヨコセ。ヨコセ。
オマエのマナをよこせ。霊力野を持っているオマエだけがワレラの糧を作り出せる。
イタイよ。やめて。やめて。イタイ。はがさないで。ちぎらないで。とらないで。
苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。
死に逝く同胞のイタミを知れ。殺される同胞の無念を知れ。
体の中を、頭の中を、卸し金で摩り下ろされてくみたいな感覚。
自分が挽肉になってく。挽肉になって一つまみ一つまみ取り出されてく。
ワレラと繋がれる霊力野をただ一人持つオマエが贖え。オマエの血肉で、生命で、悲鳴で、苦痛で。
ワレラを生かす義務を果たせ。ワレラを殺した罪を償え。
イタイ。イタイ。イタイ。ぱぱ、たすけて。おねえちゃん、たすけて。
ねえ、どうしてきてくれないの? わたし、こんなにイタイのに。どうしてきづいてくれないの?
わたし、そんなに――――ワルイ子、だった?
………
……
…
――悪い夢を、見ていた気がする。
フェイは起き上がって首を巡らせた。
湿った土と木のにおい。フェイが五感で感じる初めての土地だ。見渡す一面が木、木、木。
後ろをふり返ると、木造の大きな円形の家らしきものが建っていた。
「ここ、マクスウェルの祠……」
「また次元が裂けたんだ」
マクスウェル。知識でしか知らないが、確か、精霊の主で元素を司る大精霊。だがマクスウェルは2000年も前にエレンピオスを去って久しいはずだ。それが祀られているから分史世界、なのだろうか。
「! エルたちは!?」
エリーゼが声を上げて、フェイははっとした。
辺りを探るが、姉はもちろんアルヴィンとローエン、それにもう一人の男の気配もない。
(お姉ちゃんが、いない。いない。フェイがいないとこでお姉ちゃんに何かあったら。あ、あ、あ)
フェイの混乱に合わせて風が吹き、梢がざわめく。
じきにフェイ自身を中心とした風が起きるという時だった。
ルドガーの掌がフェイの肩を掴んだ。
「ジュード。さっきエルを担いでたの、アルヴィンだったよな。一緒にいると思うか?」
「うん。可能性は高いと思うよ。ローエンとユリウスさんも、きっと近くに飛んでるはずだ」
フェイは安堵の溜息をついた。合わせるように梢が鳴り止んだ。
ルドガーはフェイの肩から手を離し、背中を軽く叩いてからジュードと話し合いに行った。
(分かってた、のかな。フェイが何かしちゃうって。だったらスゴイ。フェイのキモチ、分かってくれたハジメテの人。最初に思った通り、パパみたいな|
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