第六十三話 明かされる秘密その十一
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「ここでお話している様に」
「先程から。そうなのです」
「加藤さん以外は戦わないに越したことはないと考えられていますし」
「しかし私達にこれを実現させることは出来ません」
これはどの剣士の願いもである。
「本当にどなたも」
「ですよね、本当にどなたのものも」
「願いがどういったものかわからない方もいますし」
中田のことに他ならない。
「それを見付けることも大事ですが。しかし」
「あの、それは」
上城はマガバーンが難しい顔になったのと共にだった、彼もそうなった。
そしてその顔でこう言ったのである。
「中田さんのお心に踏み込む」
「そうした行為になりますね」
「それはよくないですよね」
「少なくとも綺麗な方法ではありません」
マガバーンもこのことを認める。
「人の心を踏みにじることにもなりかねません」
「そうですよね」
「ですから私もです」
マガバーン自身もというのだ、他ならぬ彼の。
「それは出来る限りです」
「されたくないんですね」
「私はカーストにおいてはバラモンにあります」
司祭、その階級にあるのだ。
「それも。これは自慢ではないですがかなり高位にあります」
「カーストは大きく分けて四つ、細かく分けて三千程あるそうですね」
「はい、今も根強く残っています」
大石の問いにも答える。
「職業分化や生業の保証にもなっていて事情は複雑です」
「あながち悪とは言えませんね」
「そうです、階級ですが」
「悪ではない」
「そこには秩序があります」
これは確かだというのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「カーストも残り」
そしてだというのだ。
「職業分化にもなっていますし」
「ですね、ヒンズー教の世界では」
「そうです。それで私はバラモンの職業から申し上げます」
こう前置きして言うことは。
「人の心の中に土足で入り踏みにじる様な行為は」
「してはなりません」
大石も神父としての立場から言う。
「少なくとも私には出来ません」
「私もです」
これはマガバーンもだった。
「甘いと言われようとも」
「そうですね」
「僕も。そうしたことは」
上城もそれは同じだった、脳裏に中田が時折見せる陰のある横顔を思い出しつつそのうえで述べたのである。
「あまり」
「出来ませんね、上城君も」
「そうですね」
「人の心って大事ですよね」
まだ高校生なので完全にはわからない、そこまでの人生経験は積んでいない。
しかしそれでもだった、こう言うのだった。
「その心に踏み込むのは」
「人として許されないことです」
大石はその上城に断言して返した。
「絶対に」
「その通りですね」
「してはなりません」
こうも言う大石だった。
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