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ギザギザハートの子守唄
第七章
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娘のことになったら人が変わる親父さんだ。だから銃を持ち出す位のことは考えられた。
「そうなったら本当にやばいな」
「死人出るかもな」
「死人が出る筈がない」
 また鬼熊の断言だった。どうしてこうまで自信たっぷりなのか。俺達はこの時は全くわからなかった。頭がおかしいんじゃねえのかと短い時間の間に数え切れない位思った。
「絶対にな」
「刃傷沙汰か?」
「そりゃ同じじゃねえのか?」
「そうか。まあ殴り合いには普通になるだろうな」
「そうだろうな」
 俺達はこの位は覚悟していた。けれどまた鬼熊は。相変わらずの感じで俺達に言ってきた。今思うとこいつは本当に何もかもわかっていた。
「とにかく行け」
「何度言ってもそれかよ」
「そうだ、これだ」
 向こうも開き直った感じになってきた。
「何度でも言うからな」
「へえへえ、わかりましたよ」
「行けばいいんだろ、行けば」
 俺達ももう観念して。悪びれた感じで応えてやった。
「カルコークによ」
「じゃあ行くか」
「鉄パイプ用意しとくか」
「あと鎖とかだな」
「俺警棒持ってるぜ」
 だが自然に。喧嘩への備えになっていた。派手な喧嘩になるとやっぱり武器だった。俺はよく鉄パイプで喧嘩をした。これが一番俺に合ってた。
「じゃあそれと鉄パイプ何本かか」
「ストックも用意しとくか」
「ああ、念の為にな」
「御前等最後の最後まで物騒だな」
 俺達の話を聞きながら。鬼熊の言葉が呆れたものに変わっていた。
「平和には行けないのか」
「相手が相手だよ」
「だからだよ」
 話が少し元に戻った感じになっていた。
「とにかく行くからよ」
「あんたもどうだい?」
「俺もか」
 声をかけられた鬼熊は。こいつには珍しいキョトンとした顔になっていた。
「俺も行くのか」
「俺達が喧嘩したらあれだろ?だったらよ」
「教師引率の方がいいだろ」
「御前等今卒業したのにか」
 鬼熊はここで俺達に卒業のことを告げた。
「それで俺にも行けって言うのか」
「ああ、そうか。卒業だよ」
「俺達卒業したんだよ」
「そうだ、そうだ」
「今さっきのこと位覚えておけ」
 また鬼熊の呆れた声が俺達にかけられた。
「全く。馬鹿だな、御前等は」
「馬鹿で結構。とにかくだよ」
 俺が鬼熊に声をかけた。
「あんた、行くのか?行かないのか?」
「俺か」
「そうだよ。どっちなんだよ」
 卒業なんか関係なかった。とにかくそれを聞いた。

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