第五話「人間界」
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和気藹々として行くなんて」
弁当箱を手にしたハーピー姉妹がしみじみと呟く。確かに、エンジェロイドたちが人間界に向かうとしたら、やれ人間を殺せだの、やれ国を滅ぼせだのといった物騒な命令だからな。こうして純粋に楽しむために向かうのは初めてのことだろう。
ほのぼのとした雰囲気は物見遊山に行く観光客だ。あながち間違いではないけれども。
研究室に設置された次元転送装置【アダムス】の前に立った俺は背後を振り返る。
「今から人間界に向かうけど、心の準備はいいな!?」
『おーッ!』
「人間界に行ってバカスカ遊ぶぞー!」
『おお――ッッ!』
ノリの良いニンフやアストレア、ハーピー姉妹に控えめなイカロスまでもが空気を読んで拳を天に突き出す。その様子をタナトスがニコニコと笑顔で見守っていた。
【アダムス】は直径二メートルのリング型のゲートとなっており、ゲートの脇には座標を設定するための機器がコードで繋がれている。つい先ほど入力を済ませたばかりの機器は緑色のランプを点滅させながら、今か今かと俺の指示を待っていた。
「んじゃあ、起動っと」
ボタンを押し【アダムス】を起動させる。
一瞬ゲートに紫電が走るとゲートの中央部が青白く発光し始めた。次第に光の渦を巻きながら全体へと広がって行く。
青白い光の奔流が緩やかな渦となったのを確認した俺は満足げに吐息を零した。
「よし、ちゃんと安定しているな」
「あのマスター。向こうに着いたらどうやってシナプスに戻るんですか?」
鋭いニンフの質問にそういえばと他のエンジェロイドたちも頷き出す。
「ああ、それなら大丈夫。一度設定した座標は解除しない限りセットされっ放しだから、コイツで簡易遠隔操作すればいつでもゲートを起動できるのさ」
左手の中指に嵌めた指輪を見せる。これを使えばいつでもゲートを起動することができるため行き来もバッチリだ。ただ、欠点があるとすれば、座標の再設定はこの【アダムス】に繋がれている機器を使わないと出来ないため、決められた場所にしかゲートを開けない。
ちなみに、座標の設定場所は原作『そらのおとしもの』の舞台である空美町だ。
もしかしたら、原作の主人公である桜井智樹に会えるかもしれんな。
「よぅしっ! じゃあ、行くか!」
『はいっ!』
六人のエンジェロイドを引き連れ、意気揚々とゲートを潜る。
こうして俺たちは、人間界へと赴いた。
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