第五話「人間界」
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いる装置だ。揺り籠のような形をしているため【眠り仔】との名前がついている。
この【眠り仔】は空人の精神を抽出してそれを元に依り代となる身体を具現化、人間界へ転送する装置だ。
人間界とここシナプスは実は別々の次元に存在しており、相互に観測は可能だが干渉は出来ない。なにせ互いに異次元にあるのだから。
とある研究者は人間界に異常なほどの興味を示し、どうにか干渉できないかを模索した。その結果、判明したのは不可能という現実だった。
次元断層――次元の壁は生命体では超えることができないのだ。
それでも諦めきれなかったその研究者はある抜け道を見つけ出す。
『生身で行こうとするから駄目なんだ! 我々が見る「夢」と彼らが住まう世界の座標を合致させることが出来れば、あるいは……』
その発想をもとに完成したのが、精神抽出転換装置【眠り仔】。空人たちが見る「夢」と人間界の座標を自動適合させて、身体情報をもとに瓜二つの身体を具現化しそこに精神を転送する。
これを使い人間界に向かった空人たちの数は三百人。皆、未知の世界に興味津々なのだろう。
ちなみに【眠り仔】には皮下浸透型栄養供給装置や生命維持装置も内蔵されており、さらには汚物を自動で分解処理する機能もある。また、定期的にオレガノたちが巡回して世話をしてくれるため、二十四時間、三六五日エンドレスで眠っていても身体に支障は来さない。
人間界はシナプスと比べて文明レベルが著しく下回る。そのため翼のない彼らを【地蟲】と呼び蔑む者も多い。そういった自分が空人であることに誇りを持った者たちはシナプスに残り、人間界に現を抜かしている空人を【堕人】と称し差別している。
――どこの世界もつまらない見栄というのは存在しているようだ。
「でも、アルくんって【眠り仔】嫌ってたよね? あんな揺り籠に入ってられるかーって」
そう、俺は【眠り仔】の使用を良しとしなかった。だって、なにが悲しくてこの歳でオレガノたちにお世話されなきゃならんのだ。平気で下の処理もされるんだぞ!
「おう、だから思ったのよ。装置が無ければ一から作ればいいんじゃなーい! ってな」
無ければ作ればいい。ということで。一昔シナプスで流行ったダイブゲームを元に生身で人間界に行き来できる装置を開発したのだ。これには俺も苦労した。RG‐Tの作製なんて目じゃなかったね。
ちなみにダイブゲームというのは人間たちの夢に潜入するゲームだ。【眠り仔】のような大掛かりな機器ではなく持ち運びができるサイズの機会で操作が可能なのが利点。また、ダイブゲーム中は夢を見ている人間と接触しても向こうは起きたら覚えてい
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