Introduction
第十三話 亡国機業
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言ってた気がするけどどうやって入ったんだろうか。本当にこの学園の警備などを信用していいのか不安になってきた。
「ん? そんなの、しーちゃんに会いに来たに決まってるじゃないか。でもでも君が怪我してトーナメントに出られないって聞いてこうしてお見舞いに来たんだよ」
どこまでも自由な人だ。今頃、学園の人らは居なくなったこの人を探すのに大慌てなんじゃないだろうか。いや、それとも姿見せないで直接こっちにきたのかな? どちらにせよお気の毒に……。他人事じゃないけどね!?
そんなことを考えていると、ふとベッドの横の人影に気が付き、衝撃を受けた。そこにいたのは綺麗な長い銀髪の女性、纏っている雰囲気はよく知っている人物と似ている、しかしここにいるはずのない人物だった。
「そ、そんな……紫音……?」
僕の声を聞いた彼女は、顔をこちらの方を向ける。するとその表情が分かるようになり、しかしその容姿は紫音とは異なるものだった。よく見ると身長も低く小柄で、普通に考えれば紫音ではないことはすぐに分かるのだが、なぜか先ほどは、いや今でもなんとなく纏う雰囲気が似ているように感じた。珍しい銀色の髪という共通点と僕が無意識に紫音のことを考えていたせいだろうか。
「あ……いや、ごめんなさい、なんでもありません」
「ご安心ください、紫苑様。私も束様より伺い、事情は全て把握しております。初めまして、クロエ・クロニクルと申します。くーちゃん、もしくはクロエとお呼びください」
その目つきは鋭いものの、僕に向けてくる視線自体は不思議と柔らかい。加えて、事情も全て知っているということで、僕は少し安堵する。
「そうなんだ。クロエさん、でいいのかな?」
「呼び捨てかくーちゃん、を希望します」
「……クロエ?」
「はい、なんでしょう」
普段から呼び捨てとかあだ名とかで呼ぶことに慣れてないからちょっと呼びにくい。でも束さんと同じような呼び方をするのはさすがに恥ずかしかったので不本意ながら呼び捨てにすることにした。
「えっと、束さんとはどういう関係なのかな?」
正直、この聞き方はどうかとも思ったけどそれ以上にあの束さんと一緒にいるクロエのことが気になった。束さんが認識してこうして連れてきている以上、彼女と近しい関係なのは間違いないのだけどそれ故に興味もある。
「私は身寄りもなく、ただ死ぬだけだったところを束様に拾っていただきました。以来、身の回りのお世話をさせていただいております」
「そうそう、道に落ちてたんだよね、くーちゃん。懐かしいねー。そうだ、くーちゃんは料理が得意だから今度食べてみなよ! 消し炭みたいな卵焼きとかゲル状の味噌汁とか独創的だよね」
「そ、そうなんだ」
そんな猫の子を拾ったみたいに……。でも追及して
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